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2003. 04.08
米国独占禁止法(ハート・スコット・ロディノ法)届出義務の概要
本稿は、1976年ハート・スコット・ロディノ反トラスト強化法(「HSR法」)及び同法による届出義務について、2001年と2002年に採択された HSR法及びその関連規則に対する改正の説明を含め、その概要を記載したものです。最近のこれらの改正には、とりわけ、届出基準の変更、段階的届出手数料制の採用、及び外国企業と米国外に所在する資産の取得に関する適用除外規定の修正が含まれています。以上の改正は、企業のHSR法に基づく届出義務に影響を及ぼし得るものであり、本稿において現行のHSR法と規則について一般的な指針を提示することは有益であると考えております。
注記:本稿は、日本のクライアント向けに、HSR法に関する一般的かつ初歩的な情報を知らせることを意図していることにご注意下さい。HSR法に基づく届出の分析は個別事実により大きく異なり、特定の取引がHSR法による届出を必要とするかどうかの判断は、当該取引の特定の条件と仕組み、及び本稿では取り上げていないその他のHSR法の適用除外規定を利用できるかどうかによります。従いまして、貴社は、貴社が企図している個別の取引により生じる届出の必要性の有無については、個別に私どもにご相談下さいますようお願い申し上げます。
HSR法の概要
HSR法は、一定の要件を満たす資産および議決権付株式の取得に適用されます。HSR法は手続法です。同法は、事前届出制度と待機期間を規定しています。かかる手続は、連邦取引委員会(「FTC」)と司法省に対して、企図された買収に関する事前通知をさせ、FTC及び司法省に、当該買収について適用される実体的な独占禁止法の規制基準に基づき、買収を評価する機会を与えることを目的とするものです。独占禁止法の規制基準の中で、とりわけ重要な規定は、クレイトン法第7条です。クレイトン法第7条は、「実質的に競争を減殺し、又は独占を生ずる蓋然性がある」効果を生じさせる買収を禁止しています。FTCは、各種の取引の仕組みに対するHSR法の適用可能性、HSR法の下で認められる適用除外規定及びHSR法の規定を遵守する手続に関し詳細な規則を公布しています。
対象となる取引
HSR法は、特定の「取引規模」要件および「当事者規模」要件に該当する資産および議決権付株式の取得に適用されます。合弁会社の設立もまたHSR 法の適用対象となり、各出資会社は取得者(acquring person)とみなされます。合弁会社自体は被取得者(acquired person)となり、届出を行う必要はありません。一定の場合には、独占的なライセンスの付与もHSR法の適用対象となる資産の取得とみなされることがあります。また、パートナーシップの資産のすべてを取得する場合は資産の取得として取り扱われますが、パートナーシップの資産の100%未満を取得する場合は届出を要しません。更に、有限責任会社(「LLC」)の持分の取得には、特別なルールと政策的な運用解釈が存在します。
取引規模要件
現行のHSR法上の取引規模要件は、5,000万ドルとされています。取引の結果、取引当事者の規模や取得される議決権付株式の比率に関わらず、取得者が 5,000万ドル相当以下の被取得者の議決権付株式及び(又は)資産を保有するにとどまる場合には、当該取引についてはHSR法による届出は必要とされません。取得される議決権付株式及び(又は)資産の価額が5,000万ドルから2億ドルの間である取引については、以下で検討する「当事者規模」要件が充足される場合に届出義務が発生します。他方で、2億ドル超の議決権付株式及び(又は)資産の取得が行われる取引については、取引当事者の規模の大小に関わらず届出義務が発生します。最後に、評価額が10億ドルを超える発行者の議決権付株式を25%以上取得する場合も届出義務が課されます。
当事者規模要件
HSR法による「当事者規模」要件は、一般に、取引の一方当事者が1億ドル以上の資産又は売上を有し、他方当事者が1,000万ドル以上の資産又は売上を有する場合が、これに該当します。上記に述べたとおり、現行規則では、取得者が2億ドル超の価格の議決権付株式及び(又は)資産を取得する取引に関しては、当事者規模要件が排除されています。
当事者規模要件は、取得者および被取得者の「究極的な親事業体(ultimate parent entity)」に適用されます。究極的な親事業体を特定するためには、取引に実際に関与している当事者から、当該当事者を「支配」する当事者までの会社所有関係の連鎖をたどる必要があります。HSR法において、会社の「支配」とは、当該会社の議決権付株式の50%以上を所有しているか、又は当該会社の役員の過半数を現に指名する契約上の権利を有していることをいいます。議決権付株式を発行していない事業体については、「支配」は当該事業体の利益の50% 以上に対する権利又は解散時の当該事業体の資産の50%以上に対する権利を有しているか否かが基準となります。究極的な親事業体は、「取得者」又は「被取得者」としてHSR法上の届出書フォーム(「HSRフォーム」)に記載されます。また、当事者規模要件の該当性の判断に際しては、究極的な親事業体が支配する全ての者の資産又は純売上高が累計されます。
HSR法下で定義された用語と取引額の評価
HSR法の規定で使用されている用語は、定義された用語であることに注意を要します。例えば、役員選任の議決権を有さない株式は、HSR法上の「議決権付株式」とはみなされません。また、「資産」の定義には、独占的ライセンスが含まれています。従って、検討されている取引について、HSR法上の届出義務の有無を分析するに際しては、取引のストラクチャーを明確に理解することが不可欠です。
取引の評価もまた、HSR法上の特定の規定に従うこととなります。例えば、資産の取得の価額は公正な市場価額によりますが、当事者間で合意した価額が公正な市場価額を越える場合には取得価額によります。公正な市場価額は、取得者の取締役会又は当該取締役会より委任を受けた者が、信義誠実の原則に則って決定します。HSR法の届出が必要な場合、公正な市場価額の決定は、届出を要する場合には届出前60暦日以内のいずれかの日現在を基準日とし、届出を要しない場合は決済日前60日以内を基準日として行うことができます。なお、HSR法の規定は、公正な市場価額を決定する上で使用する評価・会計方法を定めていません。
届出対象となる取得価格は、資産取得に対して売主が受け取る対価の総額となります。この対価には、取得者が引き受ける売主の負債の総額が含まれ、また、競業避止の合意の対価として売主に支払われた額等も含まれます。取得価格は、当事者双方が対価について合意をしている場合又は届出時に対価の額を合理的に概算できる場合(例えば、契約上、合理的確実性をもって概算できる決済日後の支払いがある場合のように)に、「決定」しているとされます。将来の予想される支払いは名目金額で評価され、現在価格への引き直しはできません。取得価格が決定されていない場合は、取引は公正な市場価額で評価されます。
議決権付株式の取得価格は、買収の結果保有される議決権付株式の総額となります。議決権付株式の取得価格は、株式が公開市場で取引されているか否か、また、株式の取得価格が決定されているか否かにより決定されます。取得される議決権付株式が公開市場で取引されておらず、かつ当事者間で取得価格が決定されている場合には、取得価格が届出の対象となる取引の価額となります。取得価格が決定していない場合、取引の価額は、前記のとおり、取得者の取締役会又は当該取締役会より委任を受けた者が決定する株式の公正な市場価額となります。
HSRフォームにおける取引金額を決定するには、特定の取引により取得される株式及び(又は)資産のみならず、取引の結果保有されることとなる被取得者の議決権付株式及び(又は)資産のすべての価額を含みます。従って、取得者が、過去に、取引の被取得側当事者から議決権付株式及び(又は)資産を取得していた場合、特定の取引について届出義務を決定する上で、(適用除外のある特定の取引に関する場合を除き)以前に取得した株式及び(又は)資産の価額を合計することが必要となります。
適用除外
HSR法とその規則は、広範囲にわたる取引について、同法による届出義務の適用を除外しています。例えば、「通常の事業過程」(上記同様、定義された意味を有します。)における動産や不動産の取得については一般に届出義務はありません。ある発行体の議決権付株式の10%以下を投資目的のみで取得する場合や取得者が被取得者の議決権付株式を取得しても取得者の持分比率が増加しない場合等には、HSR法の適用は除外され、届出義務が発生しない場合があります。
HSR法規則は更に、外国企業と米国外に所在する資産の一定の取得に対する適用除外も規定しています。2002年4月、FTCは以下の主要な修正を含むHSR法規則の修正を採択しました。
- 米国企業(U.S. person)による米国外に所在する資産の取得については、当該資産が、被取得者の直近の会計年度において、5,000万ドル以上(旧ルールにおいては 2,500万ドル以上)の米国内売上を生じさせた場合に、HSR法上の届出義務が生ずる可能性があります。
- 米国企業による外国会社の議決権付株式の取得については、当該外国会社が、(a)公正な市場価額が5,000万ドル超の米国内に所在する資産を保有しているか、又は(b)直近の会計年度に総額5,000万ドルを超える米国内売上を有する場合のいずれかに該当する場合に、HSR法上の届出義務が生ずる可能性があります。なお、旧ルールでは、当該外国会社が、(a)簿価で1,500万ドル以上の米国内資産を保有しているか、又は(b)直近の会計年度に 2,500万ドルを超える米国内売上を有する場合に、届出が必要とされていました。
- 外国企業による外国会社の議決権付株式の取得は、かかる取引の結果、外国企業が外国会社を支配することとなる場合で、取得される当該外国会社が(a)公正な市場価額で5,000万ドルを超える米国内に所在する資産を保有しているか、又は(b)直近の会計年度に総額5,000万ドルを超える米国内売上を有する場合に、HSR法による届出義務が生ずる可能性があります。なお、旧ルールでは、当該買収の結果、(a)簿価総額で1,500万ドル以上の米国内資産を保有している外国会社、又は(b)簿価2,500万ドル以上の年間純売上若しくは総資産を有する米国企業を支配することとなる場合に、届出が必要とされていました。
有限責任会社(LLC)
LLCの設立又は持分の取得に関しては、特別なルールが適用されます。現行のFTCの運用では、独立した複数の既存企業を共通の支配の下に置く(即ち、一方の当事者に、LLCの利益の50%以上又は解散時のLLCの資産の50%以上に対する権利を与える場合)LLCの設立については、HSR法による当事者規模要件および取引規模要件が充足されることを前提に、届出義務が生じます。HSR法では、現金によりLLCの持分を100%未満取得する場合には、届出の義務がありません。LLCを支配するメンバーが存在しないLLCを設立した場合に関しても届出義務はありません。
届出義務
HSR法による届出は、企図する取引を証する契約書等を当事者が締結した時点で行うことができます。届出は、最終契約が締結されていなくとも、LOIや覚書等の拘束力を持たない書面が締結された時点で行うことができます。
HSRフォームは、とりわけ、予定された取引に関する情報、届出者の事業と収益に関するデータ、財務情報、子会社の一覧、5%以上の株主、他の発行者の株式の保有、及び当該取引の競争力への影響に関する情報を含む書類(例えば、投資銀行等のプレゼンテーション資料や取締役会や経営会議等に使われる資料)に関する情報等を要求しています。
必要な収益情報に関しては、究極の親事業体(ultimate parent entity)およびその子会社の米国での事業のみから生じた収益の明細を、1997年(「基準年度」)と直近の会計年度の二期間について「北米工業分類システム」(「NAICS」)により分類し、提供しなければなりません。
HSR法により届け出られた情報は機密扱いとされ、米国の情報公開法による開示から免除されます。ただし、限定的な場合(例えば、取引に関する議会による調査又は司法審査若しくは行政審査に関する場合等)には、開示されることがあり得ます。
待機期間、セカンドリクエスト、罰則
HSR法が適用される場合、届出義務を負う取引当事者は、それぞれFTCと司法省に届出フォームを提出し、取引完了までに、届出後30日間(現金株式公開買付又は破産による買収の場合は15日間)の待機期間を遵守しなければなりません。待機期間の最終日が週末か法定の休日に当たる場合は、待機期間はその翌営業日まで延長されます。なお、いずれかの当事者の要求により待機期間の短縮が認められる場合があります。
待機期間の目的は、当該取引により、潜在的に独占禁止法上の実質的な問題が惹起される可能性があるか否かを判断する機会を、FTCと司法省に与えることにあります。FTCおよび司法省は、それぞれ長大な要求書類リストおよび質問状からなる「セカンドリクエスト」を発し、取引に関する追加情報要求を行う権限を有しています。大半の事例において、「セカンドリクエスト」により、追加情報要求に基づいて追加情報が提出された日からさらに30日間、待機期間が延長されます。セカンドリクエストの遵守には、一般に数週間ないし数箇月を要します。英語以外の言語で記載された書類に関しては、FTC又は司法省は翻訳を要求することがしばしばあるので、日本企業にとっては、セカンドリクエストの遵守は特に長期にわたり、かつ煩瑣な手続となることがあります。従って、これらの機関による長期間にわたる調査が原因となって、取引完了が遅延するリスクを最小化するため、日本企業の皆様には、企図された取引について、早期の段階で独占禁止法の当初分析を行うことをおすすめします。
HSR法に基づく手続の終了により、調査を実施した規制当局は、企図されたとおり取引を実行することを承認するか、裁判手続により取引停止を求めるか、または取引当事者の譲歩を得た上で取引を承認するかのいずれかを行います。HSR法への違反については、遵守しなかった当事者に対して一日当たり 11,000ドルを上限とする民事制裁を課すことができ、当事者の役員や取締役に対しても同様に罰則を課すことができます。
段階的届出手数料制
HSR法では、現在、届出手数料の体系は、取引の結果保有することとなる議決権付株式又は資産の総額を基準として、3段階に定められています。
取引額 | 届出手数料 |
1億ドル未満 | 45,000ドル |
1億ドル以上5億ドル未満 | 125,000ドル |
5億ドル以上 | 280,000ドル |
新しい3段階の手数料制の下では、適用される届出手数料を決定するために、取引金額を正確に決定する必要があります。未公開会社株式が絡む取引、取得価格が決定されていない資産取引、現物対価取引又は価格が明確に設定されていないその他の取引の場合、取引の結果保有することとなる議決権付株式又は資産の公正な市場価額について、買収側当事者の取締役会(又はその委任を受けた委員会)による決定を経ることが必要となる可能性があります。現行のHSR法のフォームでは、記載された取引価格の決定方法を説明することが要求されるケースもあります。
ハート・スコット・ロディノ法新規則(2002年4月17日施行)が米国外における買収に及ぼす影響について
米国連邦取引委員会の合併事前届出担当当局は、主として米国外における買収に関連して、1976年ハート・スコット・ロディノ反トラスト強化法(「HSR 法」)およびその届出要件を変更する規則を公布しました。新規則は2002年4月17日より施行されました。2002年4月17日以降に完了する取引で、同日以前のHSR法規則によれば適用除外の対象とされていたものについても、この新規則の下では届出対象となる場合があります。したがって、旧HSR法上の適用除外に依拠している当事者は、当該取引が新HSR法規則の下で届出義務が生じるか否かを再確認する必要があります。
新しい規則の主要な規定の概要および当該変更が実務に及ぼす影響に関する弊事務所のコメントは以下のとおりです。
注記:本稿は、日本のクライアント向けに、HSR法に関する一般的かつ初歩的な情報を知らせることを意図していることにご注意下さい。HSR法に基づく届出の分析は個別事実により大きく異なり、特定の取引がHSR法による届出を必要とするかどうかの判断は、当該取引の特定の条件と仕組み、及び本稿では取り上げていないその他のHSR法の適用除外規定を利用できるかどうかによります。従いまして、貴社は、貴社が企図している個別の取引により生じる届出の必要性の有無については、個別に私どもにご相談下さいますようお願い申し上げます。
米国外に所在する資産の取得
新しい規則: 新しいHSR法規則の下では、取得予定の米国外資産が、被取得者(acquired person) の直近の会計年度において5000万ドル以上の米国内の売上を生み出したものである場合には、当該米国外資産の取得は届出の対象となります。
コメント: 旧HSR法規則の下では、米国企業1による米国外に所在する資産の取得は、被取得者(acquired person)の直近の会計年度において、かかる米国外資産に帰すべき米国内売上が2500万ドル以上である場合を除き、HSR法の届出義務の適用除外とされていました。また、旧HSR法規則の下では、外国企業2による米国外資産の取得もHSR法の届出義務の適用除外とされていました。
新規則は、米国外資産の取得に関して、HSR法上の届出対象となるか否かの判定基準である「米国内に対する売上」の基準額を引き上げましたが、一方で、外国企業による米国外資産の取得については、旧規則が認めていた全面的適用除外を廃止しました。したがって、新規則の施行日である2002年4月17 日以降は、米国外資産の取得については個々に、当該取得がHSR法の届出対象となるか否かを判断するため、検討が必要となるといえます。
米国企業による外国会社(注3)の議決権付株式の取得
新しい規則: 新HSR法の届出要件の下では、米国企業による外国会社の議決権付株式の取得は、当該外国会社が、(a)公正な市場価額(fair market value)が5000万ドルを超える米国内資産を保有している場合か、または、(b)当該外国会社の直近の会計年度において合計で5000万ドルを超える米国内売上がある場合に、届出の対象となります。
コメント: 旧HSR法規制の下では、米国企業による外国会社の議決権付株式の取得は、当該外国会社が、(a)帳簿価格(book value)の合計が1500万ドル以上の米国内資産を保有している場合か、または、(b)当該外国会社の直近の会計年度において合計で2500万ドルを超える米国内売上がある場合に、届出対象とされていました。
新しいHSR法規則における、外国会社の米国内資産の評価方法に関する変更(すなわち、帳簿価格から公正な市場価額への変更)は、わずかな変更ではありますが、重要な意味を有しています。資産の帳簿価格は、通常は、貸借対照表から客観的に決定されるものですが、HSR法規則に基づく公正な市場価額は、取得者(acquiring person)の取締役会(または取締役会が指定した当該会社の委員会)が当該資産の価値を信義誠実の原則に則って決定することが必要となります。したがって、この変更により、買収する側の企業は、取締役会に、外国会社の買収に伴って取得する米国内資産の価格の評価および決定を実施させなければならないという追加的な負担を負うこととなりました。
外国企業による外国会社3の議決権付株式の取得
新しい規則: 新規則の下では、外国企業による外国会社の議決権付株式の取得は、当該取得の結果、当該外国企業が当該外国会社を支配4することとなる場合で、取得される当該外国会社が、(a)公正な市場価額(fair market value)が5000万ドルを超える米国内資産を保有している場合か、または、(b)当該外国会社の直近の会計年度において合計で5000万ドルを超える米国内売上がある場合に、HSR法の届出対象となり得ます。
コメント: 旧規則の下では、外国企業による外国会社の議決権付株式の取得は、当該取得の結果、(a)帳簿価格(book value)の合計が1500万ドル以上の米国内資産を保有する外国会社を支配することとなる場合か、または、(b)年間純売上額または帳簿価格ベースの総資産が2500万ドル以上である米国会社を支配することとなる場合に、届出対象とされていました。
重要な点は、新規則においては、買収対象である外国会社(買収される外国会社により支配されているすべての事業体を含む。)が、公正な市場価額で 5000 万ドルをこえる米国内資産を保有している場合、または、買収対象である外国会社が直近の会計年度において5000万ドルを超える米国内売上を計上している場合には、外国企業による当該外国会社の議決権付株式の取得については、HSR法上の届出が必要とされる可能性があるという点です。したがって、2002 年4月17日の施行日以降は、外国企業間の取引は、米国企業を当事者に含まない場合であっても、HSR法における届出対象となる可能性があります。
- HSR法規則において、「米国企業」(U.S. Person)とは、その究極的な親事業体(ultimate parent entity)が米国内において設立もしくは組織されているか、または米国内に主要な事業所を有する者と定義されています。個人の場合は、「米国企業」とは、米国民もしくは米国居住者をいいます。
- HSR法規則において、「外国企業」(foreign person)とは、その究極的な親事業体が米国内において設立または組織されておらず、かつ米国内に主要な事業所を有しない者と定義されています。個人の場合は、「外国企業」とは、米国民または米国居住者以外の者をいいます。
- HSR法規則において、「外国会社」とは、米国内において設立または組織されておらず、かつ米国内に主要な事業所が有しない発行者と定義されています。
- HSR法規則において、「支配」とは、発行者の議決権付株式の50%以上を保有していること、または取締役の過半数を指名する契約上の権利を保有していることをいいます。議決権付株式を発行していない事業体における「支配」とは、当該事業体の利益の50%以上に対する権利または当該事業体の清算時の財産の 50%以上に対する権利を有していることをいいます。
ケン・シーゲル
渡辺 小茂亜
このニュースレターがご提供する情報は一般的なもので、いかなる個別の事案に対しても適用されることを保証したり、解決を提供するものではありません。具体的な事案においては、当該事案に対する個別の法的助言なくして、ご判断をなされないようにお願い申し上げます。