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2009. 03.02
平成21年独占禁止法改正法案の国会提出
執筆者
弁護士 雨宮 慶 kamemiya@mofo.com
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(このニュースレターがご提供する情報は一般的なもので、いかなる個別の事案に対しても適用されることを保証したり、解決を提供するものではありません。具体的な事案においては、当該事案に対する個別の法的助言なくして、ご判断をなされないようにお願い申し上げます。)
* Please click here for English version, "Japanese Diet Considers Bill to Amend Japan's Anti-Monopoly Act."
1. はじめに
平成21年2月27日、独占禁止法(独禁法)の改正法案1 (以下「21年改正法案」といいます)が国会に提出されました。平成17年改正独禁法(平成18年1月4日施行)の附則2において、改正法施行後2年以内に改正後の状況について種々の検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされていたのを受けて、昨年独禁法改正法案3(以下「旧改正法案」といいます)が提出されましたが、実質的な審議がなされないまま廃案となったため、今回新たな法案として再度提出されたものです。
21年改正法案は、多くの部分は旧改正法案と同一です。以下では、旧改正法案からの変更の有無も含めて21年改正法案を概観します。旧改正法案についての詳細な解説は、「平成20年独占禁止法改正法案の国会提出(上)、(中)、(下)」をそれぞれご参照ください。
2. 21年改正法案概観
公取委の発表において、21年改正法案における改正の骨子として挙げられているのは、「1.課徴金制度等の見直し」、「2.不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ」、「3.企業結合規制の見直し」、「4.その他所要の改正」ですが、このうち「2.不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ」については旧改正法案には項目自体がなかったものです。
2.1 課徴金制度等の見直し
課徴金制度等の見直しは、旧改正法案についての説明においては「課徴金・排除措置命令」に関する改正事項として括られており、21年改正法案でも変更はありません。したがって旧改正法案の問題点も解消されていません。主な改正点は以下のとおりです。
(1) 排除型私的独占、一部の不公正な取引方法に対する課徴金の賦課
排除型の私的独占4、一部の不公正な取引方法(共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束)について10年以内の再犯の場合、優越的地位の濫用(こちらは初犯)に対し、それぞれ課徴金が賦課されます。
(2) 不当な取引制限の首謀者に対する課徴金の増額と課徴金減免制度の変更
カルテル・入札談合の首謀者に対する課徴金が割増しされたり、課徴金減免申請についてグループ会社共同の減免申請と順位を両者で共通のものとすることが認められます。
(3) 除斥期間の延長
排除措置命令・課徴金納付命令を出すことができる期間(除斥期間)が3年から5年に延長されます。
2.2 不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ
21年改正法案はカルテルや入札談合に適用される不当な取引制限について、刑事罰である懲役刑の上限を3年から5年に引上げています。
この改正項目は旧改正法案にはありませんでした。不当な取引制限罪について実刑が言い渡された例はありませんが、それでは抑止力がないという批判や、実刑判決が出るのは時間の問題という意見もあります。刑法上3年以上の懲役刑には執行猶予を付すことができませんので、この改正項目が加えられたことは、実刑判決を求める当局のメッセージとも言え、注意が必要です。
2.3 企業結合規制の見直し
企業結合規制の見直しは、旧改正法案でも一つの柱になっており、21年改正法案でも内容はほとんど変わっていません。したがって旧改正法案の問題点もそのまま引き継いでいます。ただし、21年改正法案は、企業結合の届出を要する取引の基準を、一部旧改正法案から変更しています。主な改正点は以下のとおりです。
(1) 株式取得についての事前届出制(併せて30日の待機期間を設ける)
(2) 株式取得について、届出を要する場合の議決権保有割合の変更(10%、25%または50%を超える場合の三区分から20%または50%を超える場合の二区分に)
(3) 届出基準の変更(国内会社、外国会社を問わず基準は国内売上高とし、原則として買収者はグループで200億円、被買収者は50億円に変更)
上記のとおり、21年改正法案は、買収の対象となる会社(ターゲット)の国内売上高の基準を50億円としており、旧改正法案の20億円より引上げています。報道によれば、公正取引委員会は、より大規模な企業結合案件の審査に資源を重点配分するために、小規模の企業結合の届出を不要にすることとしたとされています。この方針自体は歓迎すべきことですが、同時に対象会社単体の国内売上高ではなく、グループ会社の国内売上高で見ることとされたため5、金額の引上げがこの程度なされただけでは届出の対象となる取引は減少しないとの見解もあり、その評価は一様ではありません。
また、21年改正法案は会社分割や事業譲受けにおいては50億円という基準の外に、取引の構成によって100億円、30億円という二つの基準をさらに設けており、これがために、同じ目的を達成する取引でも、法的構成の違いにより、届出義務が生じたり生じなかったりする場合が出てきます6。ただし、厳密には21年改正法案(法律)でも金額の下限を設定し、実際には政令で定めることとされていますので、実際に政令で定められる金額を注視する必要があります。
2.4 その他所要の改正
21年改正法案は、上記の外、主に次のような種々の規定の整備・改正を行っていますが、その多くは旧改正法案と変わっていません。したがって、旧改正法案の問題点もそのまま引き継いでいます。
(1) 外国競争当局との情報交換について明文規定の新設
(2) 利害関係人による審判の事件記録の閲覧・謄写の規定の整備
(3) 私訴における証拠開示手続きの新設
(4) 損害賠償請求訴訟における裁判所から公正取引委員会に対する求意見を義務的なものから任意のものに変更(これは旧改正法案には含まれていません)
(5) 事業者団体届出制度の廃止
3. 審判制度についての改正
平成17年改正独禁法の時から大きな議論を呼んでいる審判制度についての具体的な改正は21年改正法案には含まれていませんが、附則において「全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」とされています7。
4. 景表法についての改正
旧改正法案は、独禁法の改正法案と不当景品類及び不当表示防止法(景表法)の改正法案が一体となっており、景表法違反について課徴金の制度を新設していました。しかし、景表法は消費者庁の所管法令となる予定であることから、21年改正法案は独禁法のみについて改正する法案となりました8。
5. 施行時期
21年改正法案は、施行時期を公布から1年を越えない範囲で政令で定める日としています。旧改正法案は公布から1年3か月(を超えない範囲で政令で定める日)としていましたが、昨年旧改正法案の審議がなされず、法案の可決が先送りされて21年改正法案となったことから、1年とされたものと思われます。
1. 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」。
2. 附則第13条。
3. 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律及び不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」。
4. 「平成20年独占禁止法改正法案の国会提出(上)」では、公取委が排除型私的独占の運用を強化していることを述べましたが、平成21年2月27日に排除措置命令が出された社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に対する事案も、排除型の私的独占が認定されています。
5. 今回の改正案でも同様の変更がなされています。
6. 例えば、事業の重要部分を承継させる吸収分割を行う場合には届出が必要な場合であっても、承継の対象となる事業を一旦新設分割で新設会社に移転し、新設会社の事業の全部を承継させる吸収分割を行うという構成をとると、届出が不要となる場合があります。
7. 附則20条。なお、参議院で審議されている議員提出法案(昨年の臨時国会からの継続審議)の附則には、平成21年度中に審判を廃止し、審判機能を裁判所に移管する方向で検討する旨の規定があります(同法案附則8条)。
8. 消費者庁設置法案は昨年の臨時国会にに提出され、本年の通常国会で継続審議となっています。
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