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2007. 01.18
金商法が不動産ファンドの組成・運用に与える影響(2)−シングルTKスキーム
今回は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)が、いわゆるシングルTKスキームを用いた私募型の不動産ファンドの組成・運用に対して与える影響を解説します。
1.シングルTKスキームとは
(1) 概念図

(2) 概説
匿名組合契約を利用した不動産ファンドにおいては、実務上オリジネーターが不動産を信託会社に信託譲渡し、それと引き換えに得た不動産信託受益権をSPC(特別目的会社)1 に売却し、当該SPCが当該受益権購入資金を主として金融機関からのノンリコースローン及び投資家である匿名組合員からの匿名組合出資により調達するというスキームが採られます。上記概念図のように、不動産信託受益権を保有するSPC(以下「営業者SPC」といいます。)に対して各投資家が直接匿名組合出資を行うスキームをシングルTKスキームと呼び、投資家である匿名組合員がマザーファンドである他のSPCに一旦投資を行い、当該マザーファンドから営業者SPCに投資を行う、いわゆるダブルTKスキームと区別しています。なお、金商法がダブルTKスキームに与える影響については次回以降のニューズレターにて解説します2 。
2.影響
(1) 営業者SPCに与える影響
①投資運用業との関係
〜現行法上の取扱い〜
現行法のもとにおいては、営業者SPCが、匿名組合員より匿名組合契約に基づき受け入れた匿名組合出資をもとに不動産信託受益権での運用を行うことについては、営業者SPC自身の行為について特段業法上の規制は無いものと理解されてきました。
〜金商法施行後の原則-集団投資スキーム規制〜
金商法においては、集団投資スキーム3 において投資家が出資又は拠出した財産を有価証券等に対する投資として運用することを業として行うには、原則として「投資運用業」の登録が必要になります(金商法28条4項3号、2条8項15号ハ、29条)。
金商法では信託受益権が有価証券に含まれる(金商法2条1項14号、2条2項1号)ことから、営業者SPCが、匿名組合員より匿名組合契約に基づき受け入れた出資をもとに、不動産信託受益権での運用を業として行う行為は、原則として営業者SPC自体に投資運用業の登録(金商法29条)が必要になると考えられます。
投資運用業の登録は、法定の登録拒否事由に該当しなければ登録の申請が受理されます。しかし、当該拒否事由の一つとして、「取締役会及び監査役又は委員会を設置した株式会社でない者」が掲げられているところ(金商法29条の4第1項5号イ)、特別目的会社としての営業者SPCは通常株式会社形態をとらないことから、営業者SPCが投資運用業の登録を受けることは実務上困難であると思われます。前回のニューズレター(2007年1月24日発行)において解説したとおり、営業者SPCが登録を受けた投資運用業者に対して運用に関する権限の全てを委託した場合であっても営業者SPC自身も投資運用業者としての登録が必要となる可能性も否定できませんが(金商法42条の3参照)、このように解すると多くの不動産ファンドに与える影響が大きいことから、今後公表される政令・内閣府令、ガイドライン及びパブリックコメントの動向を注視する必要があります。
〜例外-適格機関投資家等特例業務〜
なお、営業者SPCの行為が投資運用業に該当するとしても、営業者SPCの行為が「適格機関投資家等特例業務」に該当する場合には、投資運用業の登録をすることなく、法定事項の届出のみで投資運用業を行うことができます(金商法63条2項)。
シングルTKスキームにおける投資運用業との関係では、「適格機関投資家等」のみから受け入れた匿名組合出資の運用を業として行う場合(金商法63条1項2号)には、原則として適格機関投資家等特例業務に該当することとなります4 。
「適格機関投資家等」とは、「適格機関投資家以外の者で政令で定める者(その数が政令で定める数5 以下の場合に限る。)及び適格機関投資家」をいいます(金商法63条1項1号)。この規定については、適格機関投資家等に該当するためには、最低1名の適格機関投資家が存在しなければならないという解釈も可能と思われます。この点につきましても、今後公表される政令・内閣府令、ガイドライン及びパブリックコメントの動向を注視する必要があります。
②金融商品取引業との関係-TK出資持分の自己募集
〜現行法上の取扱い〜
現行法においても、一定の匿名組合出資持分は有価証券とみなされていますが(証券取引法2条2項3号)、有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い(同条8項6号)と、有価証券の募集、売出し又は私募そのもの(自己募集)を区別し、後者については証券業には該当しないとの解釈がなされてきました。
〜金商法施行後の原則-集団投資スキーム規制〜
金商法においては、匿名組合出資持分を含む集団投資スキーム持分の募集又は私募(自己募集)を発行者自らが業務として行う場合は、前回のニューズレターにて解説したとおり、原則として第二種金融商品取引業者としての登録が必要になります(金商法28条2項1号、2条8項7号)。
〜施行後の対応〜
前回のニューズレターにて解説したとおり、SPCによる第二種金融商品取引業者の登録は事実上困難であることから、自己募集が適格機関投資家等のみを相手方として行われる(金商法63条1項1号)か、又は登録済みの金融商品取引業者に私募の取扱いを委託するとの対応が必要となるものと考えられます。
③金融商品取引業との関係-不動産信託受益権の売買
〜現行法上の取扱い〜
現行法のもとにおいては、営業者SPCが不動産信託受益権の販売を業として行う場合であっても、信託受益権の譲渡に際し、当該SPCが売主となり、かつ勧誘、契約締結等の販売に関する対外的行為の一切を信託受益権販売業者に委任し、その旨を当該委任に係る契約書等に明記した上で、自らは全く販売行為を行わない場合には、当該SPC自体は販売を行わないものとして、信託受益権販売業の登録を要しない6 という取扱いがなされているため、実務上、営業者SPCは販売行為を信託受益権販売業者に委託しているものと考えられます。
〜金商法施行の影響〜
金商法の施行後は、信託受益権販売業は信託業法ではなく金商法において規制されることになります。営業者SPCが不動産信託受益権を譲り渡し、又は譲り受ける行為は、上記のとおり信託受益権が有価証券とみなされることから「有価証券の売買」に該当するので、業として行われる場合は、第二種金融商品取引業(金商法28条2項2号)として規制の対象となります。
販売行為の全面委託に関する信託業法における上記と同様の運用が金商法においても引き続きなされるかどうかについては、今後公表される政令・内閣府令、ガイドライン及びパブリックコメントの動向を確認する必要があります。
(2) アセット・マネジャーに与える影響
有価証券である不動産信託受益権の投資活動に関与するアセット・マネジャーについても、金商法施行の影響が生じます。こちらについては次回以降のニューズレターにて解説します。
以上
- 実務上、主として特例有限会社(YK)又は合同会社(GK)が用いられます。本ニューズレターでは、特にことわりが無い限り、SPCがYK又はGKである場合を念頭において解説します。
- 次回以降のニューズレターでは、本文記載の事項のほか、金商法施行の際、現に運用されている不動産ファンドに対する金商法施行後の経過措置についても解説します。
- 民法上の任意組合契約、商法上の匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約その他いかなる形式によるかを問わず、①他者から金銭などの出資・拠出を受け、②その財産を用いて事業・投資を行い、③当該事業・投資から生じる収益などを出資者に分配する仕組みをいいます。金商法が不動産ファンドの組成・運用に与える影響の概要については、前回のニューズレター(2007年1月24日発行)をご覧下さい。
- 適格機関投資家等が一定の類型に該当(金商法63条1項1号イないしハ)する場合は特例は適用されません。詳細は次回以降のニューズレターにて解説します。
- 49人以下とすることが検討されています(三井秀範、池田唯一監修「一問一答 金融商品取引法」217頁)。
- 信託会社等に関する総合的な監督指針10-2-1(1)
執筆者
弁護士 大橋 俊明 tohashi@mofo.com
本稿は執筆者個人の見解に関わる部分があり、当事務所の意見を代表するものではありません。



