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2007. 02.04
3金商法が不動産ファンドの組成・運用に与える影響(3)−アセット・マネジャー及びファンド・マネジャーへの影響
今回は、不動産ファンドの組成・運用に関わるアセット・マネジャー(以下「AM」といいます。)及びファンド・マネジャー(以下「FM」といいます。)に対して、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)が与える影響について解説します。
1.アセット・マネジャーに対する影響
(1) 概説
シングルTKスキーム1 では営業者SPCとAMとの間で、ダブルTKスキーム2 では子SPCとAMとの間でアセット・マネジメント契約(以下「AM契約」といいます。)が締結されます。現行証券取引法では、不動産信託受益権は有価証券に含まれていないため、上記各SPCが匿名組合出資などの集団投資スキームを通じて拠出を受けた資金を用いて不動産信託受益権への投資を行う場合、上記各SPCからアセット・マネジメント業務の委託を受けたAMには、有価証券投資の助言・運用に関する許認可又は登録は要求されていません。しかし、金商法では、不動産信託受益権を含む信託受益権全般が有価証券とされ(金商法2条1項14号、同条2項1号)、有価証券の範囲が拡大されるため、AMは、AM契約の内容及び実体に応じて、「投資助言業」3 (金商法28条3項1号、2条8項11号)又は「投資運用業」(金商法28条4項1号、2条8項12号ロ)の登録を受けることが必要になります。
(2) AMは「投資運用業」の登録をする必要があるか
まず、金商法2条8項11号は、投資助言業の意義に関し、「当事者の一方が相手方に対して次に掲げるものに関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(以下「投資顧問契約」という。)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと。」と規定し、有価証券の価値等(同号イ)と、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断をいう。)(同号ロ)を掲げています。AMは、AM契約に基づき、不動産信託受益権の売買に関して、その価格、方法や時期に関する助言を行うのが通常ですので、AMは投資助言業の登録をする必要があると考えられます。
では、AMは投資助言業の登録に加えて、投資運用業の登録をする必要があるのでしょうか。金商法2条8項12号は、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約を「投資一任契約」と定義しており、投資一任契約に基づき金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用(その指図を含む。)を行うことが投資運用業に該当するとしています。投資助言業に係る投資顧問契約と投資運用業に係る投資一任契約の定義を比較すれば、AM契約が投資顧問契約に該当するか投資一任契約に該当するかの判断基準は、AMに対して投資判断の全部又は一部を一任しているか否か、つまり最終意思決定権がAMと顧客であるSPCのいずれにあるかによると考えられます。AM契約では、AMはあくまでSPCに助言をするのみであり、最終的な意思決定権はSPCにあると(明示又は黙示に)建て付けられる場合が多いのではないかと思われます。従って、AM契約が投資顧問契約に該当する場合には、投資助言業の登録で足り、投資運用業の登録までは不要となります。但し、あくまでも実体が重視されますので、SPCに公認会計士等の独立取締役が就任し実質的にSPCが何ら意思決定を行っていない等の事情がある場合には、AMが投資一任契約に基づき投資運用業を行っていると解釈される可能性はあります。この点に関して、今後公表される政令・内閣府令及びパブリックコメントの動向を注視する必要があります。
(3) SPCによる投資運用業の登録との関係
前々回のニューズレター(平成19年1月31日発行)で解説したとおり、SPCの行為が「適格機関投資家等特例業務」に該当することにより投資運用業の登録を回避することができる場合でない限り、原則としてSPC自身が投資運用業の登録をする必要があると考えられます。しかし、通常SPCは「取締役会及び監査役又は委員会を設置した株式会社でない者」という法定の登録拒否事由に該当するため、投資運用業の登録ができないと考えられます。
では、SPCが、投資運用に関するすべての権限を登録を受けた投資運用業者に委託した場合であってもSPC自身が投資運用業者としての登録をする必要があるのでしょうか。この点に関しても政令・内閣府令及びパブリックコメントの動向を注視する必要がありますが、仮に、SPCが、投資運用に関するすべての権限を登録を受けた投資運用業者に委託した場合にはSPC自身が投資運用業者としての登録をする必要はないとされた場合には、AMが投資運用業者であれば、SPCから運用に関する権限を受託することで従来のスキームの実現が可能となります。
2.ファンド・マネジャーに対する影響
(1) 概説
ダブルTKスキームでは親SPCとFMとの間でファンド・マネジメント契約(以下「FM契約」といいます。)が締結されます。2004年の証券取引法改正により、現行法においても、不動産信託受益権の取得・保有事業等を営む一定の匿名組合出資持分は、みなし有価証券に該当するものとされています。そのため、現時点でも、投資顧問業法4 4条に基づき投資顧問業者としての登録をするFMが多くなっています。金商法では、FM契約の内容及び実体に応じて、投資助言業又は投資運用業の登録が必要になります。
(2) FMは「投資運用業」の登録をする必要があるか
FMが投資助言業の登録に加えて投資運用業の登録をするべきかについては、基本的に上記1(2)の議論と同様に考えることとなります。すなわち、FM契約が投資顧問契約に該当するか投資一任契約に該当するかは、FMに投資判断の全部又は一部を一任されているか否か、つまり最終意思決定権がFMと顧客である親SPCのいずれにあるかにより判断されると考えられます。FM契約では、FMはSPCが作成した運用ガイドラインに従い、又は時宜に応じてSPCの指図を受けて業務を行うことがあると思われますが、このような場合にはFMには最終意思決定権がないと判断される場合があり、その場合にはFM契約が投資一任契約に該当しないと思われます。但し、上記1(2)で述べたのと同様に、親SPCに公認会計士等の独立取締役が就任し実質的に親SPCが何ら意思決定を行っていない等の事情がある場合には、FMが投資一任契約に基づき投資運用業を行っていると解釈される可能性はあります。この点に関して、今後公表される政令・内閣府令及びパブリックコメントの動向を注視する必要があります。
(3) みなし登録助言・代理業者
整備法5 37条により、投資顧問業法4条の登録を受けている者は、金商法の施行日において金商法29条の登録(但し、投資助言・代理業を行うものに限られます。)を受けたものとみなされます。
3.AM及びFMと第二種金融商品取引業
(1) 匿名組合出資持分に係る私募の取扱い
前回までのニューズレターで解説したとおり、金商法の施行後は、SPCが匿名組合出資持分の自己募集を行う場合には原則としてSPC自身に第二種金融商品取引業者としての登録が必要です。しかし、資本要件等の充足が必要となるためSPCが第二種金融商品取引業者としての登録を受けた上で自己募集を行うことは事実上困難と考えられます。したがって、SPCの行為が「適格機関投資家等特例業務」に該当し第二種金融商品取引業者としての登録を回避することができる場合でない限り、SPCは自己募集を行うことができず、第二種金融商品取引業者に私募の取扱いを委託する対応が必要となります。この点、現行証券取引法においては、SPCが自己募集を行わず第三者に匿名組合出資持分の私募の取扱いを委託する場合、証券会社等にこれを委託することを要しますが、金商法では、匿名組合出資持分に係る私募の取扱いは、現行の証券業登録よりも要件が緩やかな第二種金融商品取引業により行うことができます(金商法28条2項2号)。従って、金商法においてはAMやFMとなるプレーヤーが第二種金融商品取引業者としての登録を行った上で私募の取扱いをする例も出てくるのではないかと考えられます。
(2) 匿名組合出資持分の売買の媒介
金商法では、匿名組合出資持分の売買の媒介は、第二種金融商品取引業に該当します(金商法28条2項2号)。この点、現行証券取引法では、証券会社等に匿名組合出資持分の売買の媒介を委託する取扱いがなされていますが、金商法においてはAMやFMとなるプレーヤーが第二種金融商品取引業者として登録を行った上で匿名組合出資持分の売買の媒介をする例も出てくるのではないかと考えられます。
(3) 不動産信託受益権の売買の媒介
金商法の施行後は信託受益権販売業に関する規制は信託業法ではなく金商法において規制がなされることになります。SPCが行う不動産信託受益権の譲渡又は譲受けを媒介する行為は「有価証券の売買の媒介」に該当するので、業として行われる場合は、第二種金融商品取引業(金商法28条2項2号)として規制の対象となります6 。従来から、AMやFMとなるプレーヤーが信託受益権販売業の登録を行い、信託受益権販売業を行うことがありましたが、今後はAMやFMとなるプレーヤーが第二種金融商品取引業者として登録を行った上で不動産信託受益権の売買の媒介をする例も出てくるのではないかと考えられます。
(4) みなし登録第二種業者
金商法が施行される際に現行信託業法86条1項に基づき信託受益権販売業者として登録を受けている者は、金商法の施行日において金商法29条に基づく金融商品取引業者としての登録(但し、第二種金融商品取引業を行うものに限られます。)を受けたものとみなされます(金商法附則200条1項)。但し、信託業法に基づき信託受益権販売業の登録をした際に提出した業務方法書では、匿名組合出資持分の私募の取扱いや売買の媒介について言及していないのが通常であると思われますので、業務方法書の変更手続きが必要となると思われます。
以上
- シングルTKスキームの概要及び 金商法がシングルTKスキームに与える影響(営業者SPCによる「投資運用業」の登録の要否、営業者SPCが匿名組合出資持分の自己募集を行う場合の営業者SPCによる第二種金融商品取引業者としての登録の要否、営業者SPCが信託受益権の売買を行う場合の営業者SPCによる第二種金融商品取引業者としての登録の要否)に関しては前々回のニューズレター(平成19年1月31日発行)をご確認ください。
- ダブルTKスキームの概要及び 金商法がダブルTKスキームに与える影響(親SPC及び子SPCによる「投資運用業」の登録の要否、親SPC及び子SPCが匿名組合出資持分の自己募集を行う場合の各SPCによる第二種金融商品取引業者としての登録の要否、ダブルTKスキームの可否)に関しては前回のニューズレター(平成19年2月7日発行)をご確認ください。
- 正式には「投資助言・代理業」といいますが、本ニューズレターでは、単に「投資助言業」といいます。
- 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和61年法律74号)をいいます。
- 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律をいいます。
- なお、前々回のニューズレターにおいて解説したとおり、信託受益権の売買に関する業務につきSPC自身に第二種金融商品取引業の登録が必要とされるか否かという問題に関して、販売行為の全面委託に関する現行信託業法における運用が金商法においても引き続きなされるかどうかについては、今後公表される政令・内閣府令、ガイドライン及びパブリックコメントの動向を確認する必要があります。
執筆者
弁護士 黒越 純一 jkurokoshi@mofo.com
本稿は執筆者個人の見解に関わる部分があり、当事務所の意見を代表するものではありません。



