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2004. 12.01

米国におけるプロボノの伝統  モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所のプロボノ・サービス (『自由と正義』Vol.55 11月号掲載記事)

東京オフィス
ピーター・スターン、パートナー
阪田寿美、アソシエイト

モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所(Morrison & Foerster LLP)は、証券集団訴訟や銀行取引から技術移転、合併、さらには、特許案件まで多岐にわたる法律分野を網羅し、富士通、コカコーラ等の多国籍企業のみならず、小規模のベンチャー企業にもサービスを提供しているサン・フランシスコを拠点とした国際法律事務所です。

さらにモリソン・フォースターは、弁護士を雇う経済的余裕がなく、通常、弁護士を雇うことができないような団体及び個人にも、法的サービスを提供しています。以下に、ラテン語のpro bono publico(公共のため)に由来する米国の「プロボノ」活動の伝統及び当事務所が最近従事したプロボノ案件について説明します。

プロボノ・サービス

全ての米国人は、憲法によって裁判を受ける権利が保障されています。しかし、この権利は、弁護士費用を払うことのできない人には無意味です。全米法曹協会(「ABA」)、州及び地域の弁護士会は、この問題に取り組むため、低所得者層及び社会的弱者に弁護士の時間の一部を無償の法的サービスに充てるよう奨励しています。プロボノ活動は、名声や仕事量に拘わらず、全ての米国弁護士の義務だと考えられています*1

1908年、ABAが倫理規範(Canons of Ethics)を採択した際、倫理規範第12条は、「弁護士業務は司法の一分野で、単なる所得を得るための職業ではない」と規定し(一部抜粋)、弁護士報酬を支払う経済的余裕のない人々へ法的サービスを提供することを弁護士に奨励しました。ロースクールは、生徒達に社会的弱者のために仕える義務と弁護士として実務を行なう特権は互いに密接に関係し、切り離せないものであるという考えを何代にもわたって教えてきました。そして、プロボノ・サービスの提供は、伝統的に弁護士としての倫理上の義務であると考えられるようになったのです。

プロボノの伝統は、米国の弁護士実務において長い歴史がありますが、プロボノ・サービスのニーズは、近年、増加の一途を辿っています。1993年2月、 ABAの評議機関は、ABA規則を改正し、弁護士に対して最低年間50時間のプロボノ活動を提供することを奨励しました。州や地域の弁護士会も、一定時間のプロボノ活動を奨励しています。全国及び州レベルの弁護士会は、プロボノ活動を義務付けてはいませんが*2、米国の弁護士及び法律事務所は、自発的にプロボノ活動を行っています。

米国の多くの法律事務所は「ローファーム・プロボノ・チャレンジ」に署名し、公益のため更に多くのプロボノ活動に従事する道を選んでいます。このチャレンジは、トップクラスの米国法律事務所及び企業の法務担当役員が、プロボノ協会及びABAのプロボノ・公共サービス常任理事会の指導の下、1993年に作成したプロボノ規範案です。

50名以上の弁護士が所属する法律事務所は、一定の目標レベルのプロボノ活動を行うことが要請されています。当該チャレンジに署名した法律事務所は、事務所の年間の報酬請求可能時間全体の3%または5%をプロボノ活動に充てるよう最大限の努力を払うことを誓約します。法律事務所は、この目標に代えて、各所属弁護士が年間60時間または100時間のプロボノ活動を行うという選択もできます。更に、署名した事務所は、所属弁護士にプロボノ活動を行なう機会を与え、研修を実施及び監督することに同意し、また、弁護士の能力評価、昇進及び給与についての事務所の方針が当該チャレンジの目標と両立可能であることを保証することに同意しなければなりません。当事務所を含む140以上の法律事務所が同チャレンジに参加しています。

チャレンジは、プロボノ・サービスの内容について厳格なガイドラインを設定しています。例えば、提供されるサービスは法的な性質を有する必要があり、コミュニティ・サービスへのボランティアは、いくら立派であっても、当該チャレンジの対象となるプロボノ活動とはみなされません。プロボノ・サービスは、 (i) 貧困者又は当該貧困者を援助する慈善団体、宗教団体、市民団体、地域社会組織、政府系組織及び教育団体への法的サービスの提供、(ii) 公民権、市民の自由及び国民の権利を保護するための個人、集団及び団体への法的援助の提供、並びに(iii) 通常の弁護士報酬を支払うことで財政が逼迫する、又はそのような支払いが不適当な慈善団体、宗教団体、市民団体、地域社会組織、政府系組織及び教育団体に対する当該団体の目的に資する案件についての法的支援の提供の3つに分類されています。当該チャレンジに署名した法律事務所は、無償でプロボノ・サービスを提供しなくてはならず、また、低所得者又は低所得者支援の組織へ多くのプロボノ・サービスを提供するよう求められています。

モリソン・フォースターのプロボノ実務

モリソン・フォースターのプロボノ活動には、長い歴史があります。当事務所は、上記チャレンジの設立憲章の署名者であり、また、当事務所のパートナー弁護士の一人が同チャレンジの創設者のメンバーであり、報酬請求可能時間の少なくとも5%をプロボノ・サービスに充てるという目標を現在まで継続して達成しています。例えば、2003年、当事務所は、年間85,000時間のプロボノ・サービスを行いました。これは、2003年の当事務所の弁護士報酬請求可能時間の6%に当たります。「アメリカンロイヤー」誌による収益全米トップ100の法律事務所に関する2003年の調査によると、当事務所は、弁護士一人当りのプロボノ平均時間(126.2時間)及び全弁護士中20時間以上のプロボノ活動を行った弁護士の割合(65.7%)において、全米第4位にランクされました。また、5つの弁護士協会からの推薦並びに全米・地域の法律サービス提供団体、非営利団体及びプロボノ関連の依頼者から送られた52通の推薦に基づき、ABAの2002年プロボノ大賞を受賞しました。また、当事務所の各オフィスも、公益団体からプロボノ・サービスについて多数の賞を受賞しています。

当事務所では、法律相談所への弁護士の派遣、150以上の非営利組織への法律相談、影響力の高い訴訟の代理といった多岐にわたるプロボノ公益活動を行っています。特に重点を置いているのは、貧困に苦しむ子供たち、学校教育問題、公民権及び市民の自由の保障の問題、海外の人権・政治難民問題並びに住宅及びホームレス問題への支援です。当事務所が行ったプロボノ案件には、次のようなものがあります。

公民権

モリソン・フォースターは、公民権侵害による連邦政府又は州政府機関を被告とする民事訴訟において、原告を代理しています。依頼者の中には、例えば、11 歳のラテン系アメリカ人少年の家族がいます。少年は、カリフォルニア州モデストの自宅で警察の麻薬取締りの家宅捜索中、床に伏せているところを、銃口を向けた警官によって背中から発砲され、射殺されました。警察は、捜索において麻薬も武器も発見できませんでした。少年が射殺された後、残された家族(両親、 14歳の兄、8歳の妹)は、意思に反して警察に連行され尋問を受けました。当事務所は、家族が提起した訴訟の共同代理人となり、モデスト市による当該家族の逮捕は州憲法及び連邦憲法上の権利を侵害してなされたとする裁判所の判断を得ました。モデスト市は、最終和解の中で、家族に255万ドルを支払うこと並びに警察の方針及び手続を大幅に変更することに同意しました。変更した点には、警官の命令に従い、危害を及ぼす行為に着手していない人物に対して銃口を向けることの禁止や目撃者を同意なく尋問のために警察に連行することの禁止等が含まれています。この悲劇に対する賠償金として連邦政府から支払われた45万ドルと併せて、支払われた和解金は、子供の不法死亡に対して政府が支払った金額としては過去最高額と思われます。

2001年9月11日

ニューヨークで発生した2001年9月11日のテロの後、モリソン・フォースターの弁護士は、テロの余波に関連する法的問題を説明する二冊のハンドブックを作成しました。一冊は、被害者本人及び家族用で、社会保障給付金、9.11被害者賠償基金、新連邦税法及び移民法等について記載されています。もう一冊は、テロの影響を受けた中小企業及び非営利組織が直面する可能性の高い法律問題について説明しています。当事務所の多数の弁護士が、州又は連邦の給付金を得たり、9.11被害者賠償基金への申請をするためにテロの被害者本人の代理人となって、被害者の家族を支援しました。例えば、2年前に当事務所ニューヨーク・オフィスに派遣されていた春木・澤井・井上法律事務所の村野邦美弁護士は、世界貿易センターでのテロ事件被害者5名の日本人遺族を支援しました。この支援のために、同弁護士は50時間から100時間を費やして、9.11被害者賠償基金への申請書類の作成及び申請手続並びに税金問題を取り扱いました。

教育

コロラド州の最貧困地区にある6つの学校の生徒が、公立学校として最低限必要な設備を提供することを怠ったとしてコロラド州教育委員会を提訴しました。モリソン・フォースターは、本集団訴訟の弁護団長を務め、屋根の雨漏り、危険な火災避難設備、不十分な暖房設備などの状況を明らかにしました。集団訴訟は、 2000年4月、コロラド州政府が、公立学校の設備のために準備金を用意する新法を可決し、教育委員会に対してこれらの学校地区の危険な状況の一部を改善する要請を行うことで和解しました。当事務所は、和解条項が履行されるようその後も活動を続けています。

刑事裁判

モリソン・フォースターは、無実の罪で刑務所に収容された人物の釈放に成功しました。依頼人は、元婚約者の殺人容疑で誤って終身刑の有罪判決を受け、州裁判所及び連邦裁判所への上訴のいずれでも敗訴しました。当事務所が依頼者の弁護を引き受けた際、担当弁護士は独自に調査を行い、最終的に依頼人の殺人事件当日の夜のアリバイを証言する5人の証人を見つけました。その結果、地方検察局は調査を再開し、DNA鑑定による証拠も有利に働き、最終的に、依頼人は殺人の容疑が晴れ、刑務所から釈放されました。

国際人権

モリソン・フォースターの弁護士は、1991年の拷問犠牲者保護法に基づき初めて提起された事件の一つであって、エルサルバドル人の二人の旧軍司令官の下で、その部下が虐待を行ったとする事件で、原告の共同代理人を務めました。3人の原告は、1980年代の初めにエルサルバドルの軍治安部隊から身体的拷問を受けた被害者でした。当該虐待に参加していないと主張する当該軍司令官らの責任追求は、指揮監督責任の理論を前提としており、この理論において、原告は当該軍司令官は部隊を統制する十分な知識と権力を有していたにも拘わらず拷問を止めさせる行為を怠ったことを証明する必要がありました。2002年7月、 4週間の事実審の後、陪審は、原告全員の主張を認め、両被告の敗訴と当該被害者である原告へ5,460万ドルの賠償金を支払うよう評決を下しました。

モリソン・フォースター海外オフィスのプロボノ・サービス

モリソン・フォースターは、米国内のオフィスで提供するプロボノ・サービスに加えて、海外の多くのオフィスでもプロボノ・サービスを提供しています。例えば、ロンドン・オフィスの弁護士は、英国内の非営利団体に対して労働法のアドバイスを提供しています。香港及びワシントンDCオフィスでは、アジア全土から学生の音楽家を集める香港のアジアン・ユース・オーケストラに対して演奏契約、雇用法及び資金調達に関するアドバイスを提供しています。また、国際的に認められた標準に基づき、統一化された血液供給及び輸血サービス・システムを構築することで、中国でのHIV/AIDS感染の拡大を阻止することを目的とする非営利・非課税団体の財団法人セーフ・ブラッド・フォー・チャイナを支援しています。

東京においても、モリソン・フォースターは、特定共同事務所の伊藤 見富法律事務所とともにプロボノ活動を行っています。例えば、最近では非営利団体ヴァイタル・ボイスイズ(米国国務省と共に活動を行なう米国に本拠地を持つ団体)、在日米国大使館、国際労働機関(ILO)から「アジアにおける人身売買と闘う戦略」と題するシンポジウムの開催について支援を打診されました。本シンポジウムの目的は、人身売買、特に少女・婦女の強制家事労働、農業、製造業、性産業での強制労働に関する問題に取り組むことでした。2004年6 月、東京で二日間のシンポジウムが開催された後、モリソン・フォースターは、人身売買を阻止するために利用可能な現行の日本法の分析を行い、2005年1 月に国会での審議が予定される修正案について公益活動を行なうクライアントの意見を補佐する予定です。また、人身売買反対の教育、法執行行政官の研修、人身売買の被害者への直接支援を提供する団体への援助を目的として日本にオフィスを開設する予定のポラリス・プロジェクト(アメリカに拠点を置く非営利団体)を代理しています。

プロボノ活動の職務上の利益

モリソン・フォースターがプロボノ活動に従事するのは職業上の義務からだけではなく、プロボノ活動を通じて当事務所が職場としてより好ましくなり、満足感を得られるものになるという強い信念に基づいています。貧困に苦しむ依頼人の恩恵となるプロボノ活動は、当事務所並びに全ての弁護士及び職員にとっても恩恵をもたらします。

プロボノからの「見返り」には多くの形態があります。プロボノ業務は、新人弁護士に素晴らしい訓練の場を提供します。また、多くの場合、依頼人との直接交流、裁判所への出廷、弁論、取引交渉などの初めての機会を与えてくれます。これらは、新人弁護士がプロボノ以外では通常経験できない、貴重な体験となります。更に、義務として課されたプロボノ業務の達成又は義務として課せられた以上の多くのプロボノ業務を行なうことで、当事務所が判事、他の弁護士及び依頼人からの高い信頼を得ることになります。従って、プロボノを自らのために行なう一方で、プロボノを行なっているという高い評判が、法的サービス提供や依頼人との関係強化に寄与すると考えています。最後に、恐らく最も重要なのは、プロボノ業務が、従事した弁護士全員にプロとしての特別な達成感をもたらすことです。プロボノ活動を行なうことで、弁護士として仕事に幅が広がり、刺激を受け、プロボノが自ら所属する社会での弁護士としての特別な役割に気付かせてくれるのです。

効果的なプロボノ・プログラム

長年の経験によると、プロボノ活動を効果的かつ包括的に実施するためには、プロボノ活動への従事に関する事務所上層部の支持を得ていなくてはなりません。所属弁護士達にプロボノ・サービスを提供することがプロとしての責任であることを認識させ、プロボノ案件が依頼人への報酬請求可能案件と同等に扱われるという明確な方針を述べることができるのは、事務所の経営陣だけです。依頼人が対価として報酬を支払う業務と同様の評価をプロボノ活動に与えることにより、意義あるプロボノ活動への従事が、弁護士の能力評価、給与及び昇給に適用されるように事務所の全ての方針に反映されることが必要不可欠です。そうしなければ、増加したプロボノ業務のために依頼人への報酬請求可能時間が減少してしまった弁護士に不利益をもたらす危険や、若手弁護士に自分達のプロボノ業務は事務所の目標にとって重要なものではないとの印象を与える危険があります。

最後に、事務所は、意義あるプロボノ業務を見つけ、プロボノ業務を所属弁護士の利益と一致させ、所属弁護士に彼らが従事可能な様々なプロボノ案件を認識するよう目を配る必要があります。米国のプロボノ案件は、政府から与えられるというよりは、地元弁護士会のボランティアの法律サービス・プログラム、非営利法律サービス団体又は個人を通じて生じます。従って、弁護士は、自分が属するコミュニティの法律サービス提供者との関係を緊密にし、どのようなプロボノ業務の機会があるかについての情報を常に入手することが必要です。そうすることで、弁護士事務所、個々の弁護士及び地域社会のニーズに答えることができるのです。

註記

*1ABA プロボノ・公共サービスに関する常任委員会 規則第6.1注釈[1]。
http://www.abanet.org./legalservices/probono/rule61.html参照。
*2 フロリダ州弁護士会は例外であり、弁護士に対して最低年間20時間のプロボノ活動を義務付けています。

モリソン・フォースターのプロボノ活動に関するお問い合わせ、又はプロボノ業務及びコミュニティ活動に関する2003年度報告書の写しをご希望の方は、ピーター・スターン、または阪田寿美(電子メール:PStern@mofo.com)までご連絡下さい。

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