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2006. 02.01

米国特許法改正法案 変更提案 重要10項目 (Right Now! 2006年2月号掲載記事)

ブレット G. アルテン*
アレックス・チャートヴ**

*この記事についての英語の解説U.S. Patent Reform Act of 2005: Top Ten Possible Changes はこちらをクリック

米国政府は現在、大規模な特許制度改革を検討中である。2005年米国特許法改正法案(通称「H.R.2795」)が成立すれば、米国特許法は様々な側面で大幅に改正される。何種類かのH.R.2795が提出されており、現在も審議中である。このうち、どの法案が成立するかはいまだ不透明な状況である。H.R.2795が法律として成立した場合の重要な変更点のうち10項目について、以下に概説する。

1.先願主義
H.R.2795が成立すれば、米国特許制度は先発明主義から先願主義へと移行する。実際の先発明者ではなく、最先の有効出願日を持つ発明者に対して特許が認められる。その結果、米国特許商標庁(USPTO)が行っている、実際に先に発明を完成させた発明者を選定するためのインターフェアランスの手続が廃止される。現在米国は、先発明主義をとっている世界で唯一の国であり、これは一般に中小規模の発明者にとって有利であると考えられている。

2.クレームの有効性
H.R.2795は、米国特許法第102条に基づく先行技術の範囲の縮小を提案している。主要な変更点としては、第102条(c)および第102条(d)の廃止であるが、第101条は、発明者以外でも特許を取得できるものに改正される。さらに、第102条(b)の「公に用いられもしくは販売され」という文言により、発明関連技術のうち、当業者が合理的かつ実質的にアクセス可能でないものの使用、販売または販売申込みは、除外されることになる。先に出願された米国出願は先行技術のまま残り、最先の出願日とは、外国での最先の出願日を含む。共有されている、または共同開発された発明は先行技術とはみなされない。

3.ベストモード
H.R.2795は、出願人は「発明者が考える発明の最良の実施形態を開示」しなければならないとする要件を廃止している。このいわゆるベストモード要件は、米国特許法特有のものである。ベストモード要件の反対者は、これを特許訴訟費用の高額化の一要因と見ている。

4.差止救済
H.R.2795によれば、(1)裁判所は、すべての事実および当事者の関連利害に照らして公正な救済を考慮しなければならず、(2)上訴不能の侵害判決に従って差止が認められる場合を除き、裁判所は、上訴期間中、差止の停止が結果として回復不可能な損害を生じ、停止による衡平性が特許権者の有利となるものでなければ、差止命令の判断を下してはならないものとなっている。

5.付与後異議申立
H.R.2795は、特許付与後の異議申立制度を導入している。特許クレームの取消しを求めて異議を申し立てることによって、付与された特許、および再発行された特許についての見直しをUSPTOに対して求めることができる。ほとんどの場合、異議申立は公開されるとし、特許権者は、異議申立の対象とされているクレームについて、新規クレームの追加も含めて、訂正する機会を与えられる。この制度は、訴訟前の係争解決の新たなメカニズムとなるだろう。

6.欧州特許条約および日本特許法への影響
H.R.2795は、欧州特許条約および日本特許法における1年間のグレース・ピリオドの導入を促すものになっている。これは、グレース・ピリオドの満了日を実際の米国出願日からパリ条約の先願日に変更するということである。ただしこれは、日欧が、米国改正法が提案している1年間のグレース・ピリオドを採用した場合に限り認められるものとしている。

7.故意侵害に対する損害賠償の増額(三倍賠償)
H.R.2795では、特許侵害による損害賠償の増額は、以下の場合に限り認めている。(1)特許権者が侵害者に対し書面通知を行った場合(単に知っているだけでは不十分である)、(2)侵害者が特許であることを知りながら特許発明を意図的に複製している場合、または(3)侵害者が、以前に特許権侵害とされた行為と同様の行為をした場合である。賠償増額を防止するために、侵害者は、特許が無効または行使不能であると誠実な信念を持っていたと主張することができる。かかる信念は、弁護士の助言を適正に仰ぐことで証明することが可能であるが、弁護士の法的助言がないことで、故意であるという不利な推論を生じさせるものではないとしている。本改正によって、故意侵害に対する損害賠償額の高額化が抑止される可能性がある。

8.不公正行為
H.R.2795は、出願手続中の不公正行為の認定から、「心証」による審理を廃止する。不公正行為の認定には、不適切な行為がなければ審査官は、 (1)対象クレームを合理的に有効としなかったはず、または、(2)出願履歴全体を客観的に考慮した結果、不適切な行為がなければ、クレームが有効とされることはなかったのは「明白」であるとして、後に裁判所がクレームの無効判断を下すことが条件となる。さらに裁判所は、不公正行為の問題をUSPTOの判断に委ねることとしている。

9.第三者による情報提供
H.R.2795は、係属中の出願に関する先行技術特許または文献を、何人も提出することができるとしている。ただし書類の提出は、(A)特許許可通知の送付日前、または(B)USPTOによる出願公開から6ヶ月経過後、もしくは最初の拒絶理由通知日、のいずれか遅い日より前に行うこととしている。かかる提出においては、各文献の関連性を説明しなければならない。現行の規定では、かかる文献は刊行後2ヶ月以内に提出しなければならず、関連性の説明を含むことはできない。

10.損害賠償
H.R.2795は、裁判所が、組み合わせ発明の侵害に対する合理的な実施料(ロイヤリティー料)を決定する際に、「発明の貢献度」を、「組み合わせ発明のその他の特徴」とは区別して考慮することを要件としている。改正法の文言は、配分の原則および司法的に設定される「全体としての市場価値ルール」を明確化することを意図したものである。

H.R.2795は、前記の10項目の提案に加えて、次のような改正提案を含んでいる。

  • 発明者から発明を譲渡された者、または発明者が発明を譲渡する義務を負う団体または個人(すなわち権利者)が特許出願を行うことを認めている。
  • 継続出願において先出願の出願日を享受できる状況をUSPTO長官が制限することを認めている。
  • 出願人が他国で出願していないことを証明することにより非公開とされていた例外を廃止し、すべての特許出願が18ヶ月で公開されるとしている。
  • 特許出願の少なくとも1年以上前の実施を証明する要件を削除し、「事業の実施方法」に対する制限を削除し、先使用権を「商業的利用のための実質的な準備」に拡大することにより、先使用権を拡大するとしている。

米国で事業を営む日本企業は、近い将来これらの改正法案のいずれが法律として成立するのか、今後もH.R.2795の動向を継続的に見守る必要がある。

注記

* ブレット G. アルテン モリソン・フォースターLLP東京オフィス アソシエート特許ポートフォリオの形成、戦略、管理などを中心とした、知的財産権の出願や知的財産権に関する助言、特許の不正使用や企業秘密の流用をめぐる訴訟案件を手掛ける。1988年フォーダム大学ロースクールでJ.D.を取得。米国ニューヨーク州とワシントンD.C.で弁護士登録。米国特許商標庁への手続き代理資格を有する。
** アレックス・チャートヴ モリソン・フォースターLLPノーザン・バージニアオフィス パートナーテクノロジー分野を中心に知的財産権関連の基礎、訴訟、紛争予防およびライセンス供与などの案件を手掛ける。1980年デューク大学ロースクールにてJ.D.取得。米国カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントンD.C.で弁護士登録。

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