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2013. 05.21

【ニュースレター】 欧州金融取引税

(執筆者) Jeremy Jennings-Mares (London)/Peter Green (London)/David Goett (New York)

(参考訳) 原題: A European Financial Transaction Tax
Please click here for English version.

[PDF]

2011年9月、欧州委員会は、当初、EU加盟全27カ国に金融取引税(「FTT」)を導入することを提案した。しかし、程なくして、加盟国のうちの多くがFTT導入に賛成しないであろうことが明らかになった。

そのため、2012年秋、FTT導入を強く望む一部の加盟国は、あまり知られていない手続である、「強化された協力(enhanced co-operation)」手続によるFTT導入を書面により公式に欧州委員会に要請した。合理的な期間内に全EU加盟国すべての賛成を得られないことが明確になり、欧州委員会が提案する構想を進めようとする9カ国以上のEU加盟国がこの手続に参加することとなった。

2012年10月、欧州委員会によるFTT導入に向けた「強化された協力」の提案は、欧州議会や経済・財務大臣らの承認を受けた。そして、欧州委員会は、2013年2月14日付で最終案(「指令案」)を公表した。この指令案が実施された場合、指令案は、「強化された協力」手続に参加する加盟国(「参加加盟国」)のみ拘束する[1]

FTTの対象範囲 (対象となる金融取引)

指令案2.1条(2)は、以下各項に該当する金融取引がFTTの対象となる旨規定されている。

(a) ネッティングや決済を行う前の金融商品の売買

(b) グループ内事業体間で所有者として金融商品を処分する権利の譲渡及び金融商品に係るリスクの移転を含むその他同様の取引(かかる譲渡又は同様の取引が売買には該当しない場合)

(c) ネッティングや決済を行う前のデリバティブ契約の締結

(d) 金融商品の交換

(e) レポ取引、リバースレポ取引又は証券貸借取引

株式・債券等の発行、割当、引受又は募集の申込等プライマリー市場取引[2]及び企業再編又はリストラクチャリングの一環として行われる取引については、指令案の適用除外とされる。また、欧州中央銀行(ECB)、欧州投資銀行(EIB)、欧州金融安定基金(EFSF)及び欧州安定メカニズム(ESM)等の欧州の中央銀行やEU機関との取引並びに政府機関によりこれらに相当すると認められたその他の国際機関又は組織との取引も適用除外である。

金融商品とは、金融商品市場指令(MiFID)別表Iセクション(C)により定義され、譲渡可能証券、マネーマーケット商品、集団投資ファンドの持分(UCITS指令(譲渡可能証券の集団投資事業に関する指令)及びAIFMD(オルタナティブ投資ファンド運用者指令)の対象となるファンド)並びに各種デリバティブ(オプション、先物、スワップ及び先渡取引)を含む。上記指令案2.1条(2)に規定される金融商品は、証券化債券(すなわち、信用リスクの移転を伴う債券)及び「信用リスク以外のリスク(保険の証券化における引受リスクの移転等)の移転を伴う」証券化と同等の取引により募集が行われるその他の売買可能な証券又は金融商品を意味し、仕組み商品をも含む。

指令案では、2.1条(2)の(a)項、(b)項、(c)項及び(e)項に記載された各取引は、それぞれ一つの金融取引とみなすことが規定されている。この規定は、レポ取引、リバースレポ取引及び証券貸借取引にとって特に重要である。というのも、これらの取引がその経済的実質により一つの取引と解釈されるのではなく、その法的構造に基づき二つの別の取引である(それ故FTTを二回支払わなければならない)と解釈される可能性があるからである。但し、金融商品の交換は、指令案の目的上二つの別の取引とみなされる。これは、(債務)交換提案が一般的である負債管理において重大な結果をもたらす可能性がある。

さらに、2.1条(2)の(a)項から(e)項の取引について重大な変更があった場合、FTTの目的上、新たな取引が生じたものとみなされる。重大な変更には、当事者の変更、取引の目的・範囲(スケジュールを含む。)の変更又はそれまでに合意されていた取引対価の変更が含まれる。また、FTTの税率の引上げを招くような変更は重大な変更とみなされるため、かかる変更があった場合は新たな取引とみなされる。このような仕組みは、もともと租税回避の防止を目的として策定されたものである。

指令案の適用対象

指令案は、次の条件に該当する金融取引全てに適用することを目的としている。

  • 当該取引の少なくとも一当事者が参加加盟国の領域内において設立されており、かつ、
  • 参加加盟国の領域内で設立された金融機関が当該取引の当事者である(当該金融機関が自己勘定又は顧客勘定で金融取引の当事者となっている場合或いは金融取引の当事者名義で取引を行っている場合のいずれの場合も含む)

ここにいう金融機関とは、以下各項を含む。

(a) 投資サービス会社

(b) 規制市場その他の組織化された取引場所・取引プラットフォーム

(c) 銀行等の信用機関

(d) 保険会社・再保険会社

(e) UCITS及びその管理会社

(f) 年金基金及びその投資運用会社

(g) オルタナティブ投資ファンド及びそのファンドマネジャー

(h) 証券化目的の特別目的事業体

(i) 保険目的の特別目的媒体(SPV)

(j) 年平均金融取引高がその純売上高の年平均の50%超を占める、その他次に掲げる事業のうち少なくともひとつを行っている企業、機関又は個人[3]

(i) 預金の受入、貸付、ファイナンスリース又は保証若しくは融資約定の締結

(ii) 自己勘定または顧客勘定による金融商品の取引

(iii) 企業の持株取得

(iv) 金融商品への関与又は金融商品の発行

(v) 上記(i)から(iv)に関連する事業に関する業務提供

この点、セントラル・カウンターパーティや証券集中保管機関については、それ自体が取引に関与しない場合、金融機関とはみなさない。

適用範囲

指令案4.1条は、金融機関が参加加盟国で設立されたとみなされる場合を規定している(但し、当該金融機関の取引相手については定めがない)。これに該当するのは、金融機関が、当該加盟国内に登録住所、恒久的住所又は支店を有する場合だけではなく、当該加盟国当局から金融機関としての営業認可を受けている場合又は加盟国内の取引に関して加盟国外において認可その他を受けている場合を含む。すなわち、この条項は、課税対象金融機関が、MiFIDに基づいて営業している場合等制度上保証された上で営業している場合を対象とすることを目的としている。

但し、上記規定によっても参加加盟国で設立されたとされない金融機関であっても、上記規定により参加加盟国で設立されたとみなされる金融機関との間で取引を行う場合又は当該参加国内で設立された非金融機関との間で取引を行う場合は、参加加盟国内で設立されたものとみなす。

組織化されたプラットフォームで取引されないデリバティブ取引は金融商品の定義から除かれる一方、ある金融機関が、参加加盟国内に登録住所を有する法人又は参加加盟国内に本籍若しくは現住所を有する自然人が発行した金融商品に関する金融取引の当事者となる場合、当該金融機関は参加加盟国内で設立されたものとみなす。上記は、「発行地原則」として知られる原則を反映したものである。この原則により、両当事者が参加加盟国で設立されたのではない場合であっても、参加加盟国内で設立された発行者が発行する関連金融商品に関する金融取引に合意する場合は、当該金融取引のかかる各当事者は、当該参加加盟国のFTTの対象となる。

4.2条は、参加加盟国内に登録住所を有する非金融機関(参加加盟国内に本籍若しくは現住所を有する自然人を含む。)は参加加盟国内で設立されたものとみなし、加盟国に支店を有する非金融機関は、当該支店が行う金融取引について当該加盟国で設立されたものとみなすことを定めている。外国の非金融機関であっても、参加加盟国の発行者が発行する関連金融商品に関する金融取引(組織化されたプラットフォームで取引されないデリバティブを除く。)を行う場合は、当該参加加盟国で設立されたものとみなされる。

この一般的な発行地原則には除外規定もある。納税義務者が、対象となる取引の経済的実質が参加加盟国との結びつきを持たないことを立証した場合には、当事者は、当該取引に関して当該参加加盟国において設立されたものとはみなさない旨定められている。但し、現時点では、経済的な結びつきを持たないことを立証するために必要な証拠の種類やレベルは明確ではなく、この条項については、最終的な指令を各国の法令に組み入れるにあたり、参加加盟国によって異なる基準が適用される可能性がある。

金融取引税の課税可能性

FTTは金融取引が行われた時点で個々の取引について課税可能となり、取引の課税対象額に対して徴収される。

デリバティブ以外の金融取引については、譲渡と引き換えに取引の相手方又は第三者が支払うか支払義務を負う対価の全てが課税対象額となる。但し、対価が市場価格を下回る場合及び同一グループに属する主体間の取引については、課税対象額は金融取引の発生時に決定される市場価格とされる。ここでいう「市場価格」とは、独立当事者間の取引において対価として支払われるべき金額全額と定義される。

デリバティブ金融取引に関しては、その取引の課税対象額は、金融取引の時点でのデリバティブ契約の想定額である。

FTTの適用税率は参加加盟国が個々に決定するが、デリバティブ以外の金融取引については課税対象額の0.1%以上、またデリバティブ金融取引については課税対象額の0.01%以上でなければならない。

FTT納税義務

指令案は、該当取引の当事者であるか、取引の当事者を代理するか又は取引をその計算で行う各金融機関が主にFTTの納税義務を負うと定めている。FTTは、上記基準に従って当該金融機関の設立地とみなされる参加加盟国の税務当局に対して納税される。金融機関が期限内にFTTを支払わない場合には、その取引の各当事者が納税に係る連帯責任を負うことになる。指令案はまた、参加加盟国が、取引の当事者ではない者がFTTの支払いに係る連帯責任を負うよう規定を定めることを認めている。

各参加加盟国は、FTTの有効な支払いが確実に行われるために必要な登録、会計及び報告に関する義務を制定する責任を負い、欧州委員会は、この点につき参加加盟国が講じるべき措置を指定して委任行為(delegated acts)を承認することができる。FTTの納税義務がある場合、電子取引については課税対象となった時点で、また、その他全ての取引については課税対象となってから3営業日以内にこれを支払わなければならない。

濫用防止規定

指令案は一般的な濫用防止規則を設けており、この規則では、参加加盟国に対し、自国の経済的実質に照らして「・・・租税回避を主要目的として導入される、税務上の優遇措置[につながる]人為的な処理」を明示するよう指示している。この点において、商業的実質のない処理は人為的とみなされ、指令案には、この目的において処理が人為的であることを示し得る状況の様々な例が盛り込まれている(その処理の個々の段階の法的性質が全体の法的実質と整合しない場合や取引の性質が循環取引である場合など)。

一般的な濫用防止規則のほか、指令案では、参加加盟国で発行された原証券の取引に対する課税の回避を主要目的として発行される預託証券やこれに類する証券は、もしかかる方法によれば税務上の優遇措置が受けられる場合、当該参加加盟国で発行されたものとみなす旨を明確に定めている。これについて、各参加加盟国は預託証券の取引が原証券の取引を代替した範囲を検討するよう指示されており、その代替処理が著しい程度に行われたと判断した場合には、その預託証券が、実際に原証券の取引に対する課税の回避を主要目的として発行されたものではないことを証明する立証責任をFTTの納税義務者が負うことになる。

所見

「強化された協力」手続によりFTTを実施するための時間は非常に短い。欧州議会の委員会による投票が2013年5月28日に、また、欧州議会の本会議が2013年7月2日に予定されている。指令が施行・公布された後は、参加加盟国は2013年9月30日までに指令を法制化しなければならず、FTTは2014年1月1日からの適用が予定されている。他のEU法規の多くが道半ばであることを考えると、このスケジュール案の現実性は未知数である。

上記の発行地原則によりFTT案の適用範囲は極めて広いため、金融取引の各当事者がFTT圏外で設立され、その圏内の支店を介して取引するものではないが取引の対象物がFTT圏内で設立された主体の発行した金融商品であるような場合も含まれる。このような状況においては、その金融取引の各当事者は、発行主体の設立地である参加加盟国の当局に対し、FTTの全額を支払う義務を個々に負うことになる。

米国のFATCA法(米国を源泉とする支払金に源泉徴収方式で課税)とは異なり、指令案により(このまま実施されれば)、FTT圏の加盟国は外国人に直接FTTを課すことができる。このアプローチがEU法規の原則に違反するか否かの問題はさておき、そのような場合に原金融商品の発行者の自国である加盟国が取引の当事者に対してどのようにFTTを課税し、徴収するかという問題が生じる。FTT圏外のEU加盟国が指令案の条項による拘束に同意しなかった状況において、当該EU加盟国が自国民から外国の税金が徴収されることに協力的になるとは考え難い。非EU諸国に至ってはこの点に関する協力はさらに望めない。

もうひとつの問題は、FTT圏の加盟国が、自国の法域で設立された発行者の株式の金融取引の存在、特に取引所外で取引が行われた場合をどのように把握するかということである。

また、金融危機後の法令において、指令案は、特に取引所その他の組織化されたプラットフォームではなく店頭で取引されるデリバティブの利用を実質的に奨励する点で間違いなく独特な存在である。その理由は、一方当事者が、例えばある特定の株式に投資する代わりに金融取引契約を締結することを希望し、かつ、その金融取引の両当事者が当該取引によりFTTの対象となる状況において、当該取引がレバレッジなしであること前提として、その状況が当該株式自体の売却ではなく、その株式のトータル・リターン・スワップ契約を締結することにより発生した場合には、最終的な濫用防止規定に従い、当該トータル・リターン・スワップに関して課されるFTTは、株式自体の売却について課されるFTTのわずか10%となる。

さらに、発行地原則を構成する規定から店頭デリバティブ取引が除外されることは、金融取引の双方の当事者(FTT圏と関係のない者)にとって、FTT圏で発行された株式と結びつく取引に係るFTTの支払いは、(最終的な濫用防止規定に従い、)株式自体の取引ではなくその株式に係る店頭デリバティブ契約を締結することにより、すべて回避可能であることを意味する。

但し、株式に係る課税対象のオプションが売却された場合には、FTTは、当該売却に対してのみならず、デルタヘッジ目的による当該オプションのポジションの原証券の購入又はポジションをクローズする取引についても、納税義務が発生する。これにより、FTT圏の株式に係るオプションのデルタヘッジは、将来、より高くつくことになる。

また、少なくとも関係参加加盟国との経済的な結び付きの有無の判断基準や、指令案の濫用防止規定において金融取引にまつわる処理が人為的と判断される場合が大幅に明確化されるまでは、FTT案の域外の範囲が、特にFTT圏以外の金融機関に懸念を生じさせるものと思われる。特に難しいのは、参加加盟国それぞれが、理論上、金融手続の特性化に関して大きく異なる法を制定し得ることである。また、このような問題に対する欧州委員会の意思が現時点で不透明であることも、FTT圏外の金融機関が自らの事業分野に及ぼす指令案の影響を測ることを極めて困難にしている。

脚注

[1] 現在、この参加加盟国は、オーストリア、ベルギー、エストニア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スロバキア、スロベニア及びスペインであるが、今後他のEU加盟国がこの「強化された協力」手続に参加することは妨げられない。

[2] 財政的中立性を保つため、集団投資ファンドにおける株式・持分の発行・募集をFTTの対象とすることは目的としていない。但し、当該商品の流通市場における販売・譲渡、償還は、指令案においてFTTの対象である。

[3] 事業体の年平均金融取引高に関しては、デリバティブ取引以外については各取引の取引高を課税対象額とし、デリバティブ取引については各取引の取引高を課税対象額の10%として、過去3暦年にわたり計算する(それぞれ以下「金融取引税の課税可能性」において言及する)。また、事業体は、連続する2暦年において、その年平均金融取引高が50%基準に満たなかった場合、金融機関とはみなさないよう要請することができる。

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本稿は一般的なもので、ここに含まれる情報はあらゆる事案に適用されるものではなく、また個別の事案に対する具体的な法的アドバイスを提供するものでもありません。

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