2003. 04.15
China Law Bulletin 4月
目次:
- 編集者注
- 中華人民共和国の新たなM&A規則および外国からの投資に関するその他の関連規則
- WTOに対するコミットメントに応じ中国建設部および対外貿易経済合作部が建築設計および都市計画サービスへの外資の参入・につき新たな規則を採択
- 中国における外資ベンチャーキャピタル企業に対する新たな規制
- 中華人民共和国政府の再編
- 対外貿易経済合作部が持株会社に関する新たな法的枠組を採用
- 外国からの投資に関する重要事項を明確化する対外貿易経済合作部の通達
- 国家外為管理局が直接投資および対外貿易取引に関する外国為替管理に関し重要な2通達を発出
編集者注
中国の経済と法制度は急速な発展をとげており、ほぼ毎年何らかの劇的な変化が生じている。2003年において、中国政府はすでに、世界貿易機関(WTO)に対するコミットメントを遵守するため、また外国からの投資を規制する法律の全般的な近代化および合理化のために必要な法制度の導入を継続しており、本年はとりわけ重要な年となることが予想されている。
最近相次いでいる新しい法規の制定や現行法の改正は、ベンチャーキャピタル投資、M&A、外国の投資家による国営企業の株式取得など、いくつかの重要な法律分野を対象に大きな前進が見られる点で重要なものであるといえるが、同時に、これとは相反する中国政府の利益を反映したものでもある。中国政府は、例えば建築設計や都市計画への外資による無制限の投資や、多国籍企業による中国国内の持株会社に関し完全な自由を与えることを認めることに抵抗感を持っているように思われる。従って、これらの分野をはじめとして他の分野においても、これらの法規は、中国のWTOに対するコミットメントがすべて発効した暁には新たな法規に置き換えられることが予定されており、単なる過渡的な措置にすぎないものである。外国投資家にとっては、これらの変化の一部が中途半端なものであることは、期待はずれなものであるに違いない。
一方で、中国政府は、それがWTOの加盟条件になっているかどうかに関わらず、いくつかの育成を目指す分野を特定している。かくして、数年前には考えられなかったことであるが、国内ベンチャーキャピタル産業や外国からの国内企業への投資を促進するための劇的な対策が取られた。外国為替の規制および数多い政府認可条件が全面的に撤廃されるなど、外国人投資家に影響を及ぼす様々な規制や制限の大幅な見直しが行われない限り、これらの法令による影響はさほど大きいものではないが、これらの法令は、中国政府の短期的な目標が現れているものであるといえる。今号のChina Law Bulletinでは、かかる興味深い新たな法令およびその他の法改正に焦点を当てる。
- ベンチャーキャピタル投資
-- 中国政府は、2001年以降、外国のベンチャー・キャピタリストが、その投資ファンドおよびファンドマネジメント会社の運営を中国国内で行うよう促進することに取り組んできたが、これまでかかる取り組みは目立った成果をあげていない。新しいベンチャーキャピタル関連法は、課税の関係で投資ビークルを(リミテッド・パートナーシップのような)パス・スルー・エンティティーとすることを認め、また外部の第三者をインベストメント・マネージャーとする等の国際的慣例を取り入れることに明確に焦点を合わせたものであり、多くの劇的な変化をもたらすものである。しかし、これで外国のベンチャー・キャピタリストにとって十分に魅力的と言えるかどうか、依然疑問は残る。 - M&A
-- 一連の新法令により、外国投資家にとっては初めて、国内企業の株式または資産を取得するための包括的かつ体系的な手続が明確化されることとなる。また、これまでにない動向として、これらの法令は中国の法制度で初めての独占禁止法の例ともなっている。これに関連して政府は、国有企業株式および国内企業の上場株式への投資に対しても、新しいルールを採用した。ただし、業界指針により、特定分野の投資活動が外国投資家に対して制限あるいは禁止されるなど、これらの投資活動に対する障壁はまだ数多く残っており、その意味で、外国投資家にとって、かかる変化が単に形式上のものでなく実質のあるものであるといえるかどうか、疑問が残る。 - 持株会社
-- 数年来、多国籍企業は、中国の持株会社制度を、自社の中国でのオペレーションの組織化および合理化の手段としてとらえてきたが、中国国内子会社間の資金移動の禁止や輸入規制等持株会社に適用される数々の法的規制により、持株会社の有用性は阻害されてきた。この分野における新たな法令はかかる問題の多くを解決しており、これによって持株会社を使う魅力が増すはずであるが、やはり外国投資家の懸念をすべて払拭するには不十分なものにとどまっている。 - 中国・外資ジョイントベンチャーへの25%以下の投資
-- 外国投資家に有利な動向として、外資が中国・外資ジョイントベンチャーに対して25%以下の投資を行う場合に関し、その投資プロセスおよびジョイントベンチャーの法的地位を明確にする新しい法令が発表された。 - 外国為替
-- 中国政府は、外為法について、外国からの投資と国際貿易に関する部分を明確化する非常に有用な2通達を発表した。 - 建築設計および都市計画
-- これらの法令に基づき、中国・外資ジョイントベンチャーを通じた建築設計および小規模都市計画への外資の参入が認められる。ただし、外資に開放されている分野を規制している多くの中国の法令同様、建築設計および都市計画に関する法令は、WTO合意の中では触れられていない多数の資格要件を外資に課しており、これらの要件が今後緩和または排除されていくかどうか、今後見守っていく必要があると考えられる。 - 中華人民共和国政府のリストラクチャリング
-- より市場志向の強い経済体制へ踏み出す重要な一歩として、中国政府は最近いくつかの省庁の再編を行った。
また、中国証券監督管理委員会(CSRC)が、中国国内に投資する外資系会社が中国国外の市場にも株式公開しようとすることに関して、その承認プロセスに関与しないことを決定したことは注目に値する。 2003年4月1日にCSRCが告示した、「第二次行政認可事項の取消および特定行政認可事項の管理方法の変更に伴う事後監督・連携作業に関する通知」 (Notice Concerning Follow-up Supervisory and Link-up Works After the Cancellation of the Second Batch of the Administrative Approval Items and Change to Administrative Methods on Certain Administrative Approval Items) によれば、CSRCは今後、中国に進出している外国企業による中国以外での株式公開および上場について、PRC(中華人民共和国)法律意見書の審査・承認を行わないこととされた。従来は、CSRCにPRC法律意見書に対する異議がない場合、CSRCは意見書を受け取った日から15営業日以内に、当該株式募集に関する事実上の政府承認にあたるノー・コメント・レターを発行していた。
この変更により、外国企業は時間のかかるCSRCによる審査手続の負担から解放されることとなったが、他方、香港証券取引所または香港証券先物委員会が、中国国内の外資系企業の株式公開をCSRCのノー・コメント・レターなしに今後どのように取り扱っていくのか、完全に明確ではない点もある。今のところ、香港証券取引所はノー・コメント・レターなしで手続を進めることに意欲的であるが、その立場は変わる可能性があり、このような状況にある企業は、募集の手続を進めるにあたりこの点に十分に注意しなければならない。
加えて、情報産業部(MII)は「電気通信規制法」 (Telecommunication Regulations) の別紙「電気通信事業業種分類一覧」 (Classification of Telecommunications Services Catalog) を大幅に改定したものを、 2003年4月1日付通達「電気通信事業業種分類一覧」 (Classification of Telecommunications Services Catalog) として発出した。中国のWTO加盟後、電気通信分野における外国からの投資に関するWTOに対するコミットメントがどのような形で「電気通信規制法」 (Telecommunication Regulations) の規制を受けることになるのか明確ではなかったため、カタログ改定が広く要望されていた。改定後のカタログは、改定前に比べ非常に詳細で、WTOに対するコミットメントにおいて明確化された電気通信サービス分野の分類に的確に準拠し、同時に構成に一貫性があり分類項目の重複も排除されている。
カタログ中の分類項目の多くが入れ替え、整理されたが、基本電気通信サービスと付加価値電気通信サービスの区分は継承され、前者は中核電気通信活動および中核電気通信サービスへのアクセスを提供または補完する活動に細分化されている。残念ながら、この通達では付加価値電気通信サービスの分野が外資に解放されるのかという積年の問題は解決されていない。MIIは、WTOに対するコミットメントで明示的に列挙されていない限り、付加価値電気通信サービスについては、外資を排除できるという立場をとっている。
中華人民共和国の新たなM&A規則および外国からの投資に関するその他の関連規則
国内企業との合併または国内企業の買収を予定している外国投資家に対する暫定措置
2003年3月7日、中国対外貿易経済合作部(MOFTEC)、国家税務総局、国家工商行政管理局(SAIC)、 国家外為管理局(SAFE)は2003年4月12日発効予定の「国内企業との合併または国内企業の買収を予定している外国投資家に対する暫定措置」 (Temporary Measures on Foreign Investors Merging with and Acquiring Domestic Enterprises) を共同で公布した。この規定は、外資がかかわるあらゆるタイプのM&Aについて共通に適用される特定の条件を定めることを目的とした初めての包括的な規則であり、中国の外資関連法令の全面的な近代化および合理化へ向けた新たな一歩を象徴したものであるといえる。
国有企業再編のための外資利用に関する暫定規定
上場企業の国家保有株式および法人保有株式の外国投資家への譲渡に関する通知
適格外国機関投資家による国内株式への投資に関する暫定措置
既に公布済みの「国有企業再編のための外資利用に関する暫定規定」 (Tentative Provisions on Using Foreign Investment to Reorganize State-Owned Enterprises) (国家経済貿易委員会(SETC)、財務部(MOF)、SAIC および SAFEによる共同公布、2003年1月1日発効)、「上場企業の国家保有株式および法人保有株式の外国投資家への譲渡に関する通知」(Notice on Transferring State-Owned Shares and Legal Person Shares of Listed Companies to Foreign Investors )(中国証券監督管理委員会(CSRC)、MOF および SETCにより2002年11月1日共同公布−「上場企業に関する通知」(Listed Company Notice))および「適格外国機関投資家による国内株式への投資に関する暫定措置」(Temporary Measures for Investment in Domestic Securities by Qualified Foreign Institutional Investors )(CSRC および中国人民銀行により共同公布、2002年12月1日発効) と並び、「M&A規則」(M&A Rules) は、外国からの直接投資に関する中国の現行の法的枠組みを補足・改善する最新の法令である。
詳細はNew PRC Foreign-Invested M&A Rules and Other Related Regulations on Foreign Investmentを参照のこと。
WTOに対するコミットメントに応じ中国建設部および対外貿易経済合作部が建築設計および都市計画サービスへの外資の参入につき新たな規則を採択
中国建設部および対外貿易経済合作部は、共同で建築設計会社および都市計画サービス会社に関する2つの行政規則を2002年9月および2003年2月にそれぞれ公布した。中国国内の都市部および近郊部の広範囲において全面的な再開発および建て替えが急速に進む中、これらの行政規則は中国経済の経済的および社会的に重要な分野に取り組むものであり、外資の参入に比較的透明な道筋をつけている。これらの行政規則は以下の通り。
- 2002年12月1日発効「外資建設工事設計企業管理規定」(Foreign Investment Construction Engineering Designing Enterprises Administrative Regulations) および
- 2003年5月1日発効「外資都市計画サービス企業管理規定」(Foreign Investment Urban Planning Service Enterprises Administrative Regulations)
詳細はMOC and MOFTEC Adopt Regulations Regarding Foreign Investment in Construction Design and Urban Planning Service Enterprises to Address WTO Commitmentsを参照のこと。
中国における外資ベンチャーキャピタル企業に対する新たな規制
外資ベンチャーキャピタル企業管理規制法
インターネットバブルが崩壊し、ベンチャーキャピタル投資が世界中で減速する中で、国際的なベンチャーキャピタルファンドは中国に対する強い興味を保持しているが、他方、これらのベンチャーキャピタルファンドは、そのオペレーションを中国国外において行っている。ファンドの運用を中国国内に誘致するため、「外資ベンチャーキャピタル企業管理規制法」(Regulation on the Administration of Foreign-Invested Venture Capital Enterprises) が2003年1月30日公布され、2003年3月1日発効した。
詳細はChina's New Foreign-Invested Venture Capital Regulationを参照のこと。
中華人民共和国政府の再編
2003年3月10日、全人代は国務院下のいくつかの省庁の再編計画を承認した。再編の主要な内容と中国国内の外国人投資家のための解説は、PRC Government Restructuringを参照のこと。
対外貿易経済合作部が持株会社に関する新たな法的枠組を採用
外国投資家による投資目的企業の設立に関する暫定規定及びその附則の訂正に関する決定
2003年3月7日、対外貿易経済合作部は「外国投資家による投資目的企業の設立に関する暫定規定及びその附則の訂正に関する決定」(Decisions to Amend the Tentative Provisions Regarding the Establishment of Companies with an Investment Nature by Foreign Investors and Its Supplemental Provisions) を公布し、公布から30日後に発効した。下記記事では、いくつかの未解決の問題のほか、「持株会社に関する新規定」(New Holding Company Regulations)により導入された「持株会社」と呼ばれる外資の投資会社に関する主要な変更点の概略が述べられている。
詳細はMOFTEC Adopts New Holding Company Regimeを参照のこと。
外国からの投資に関する重要事項を明確化する対外貿易経済合作部の通達
外資系企業の検査、認可、登記、外国為替および税務の管理強化に関する問題についての通達
2002年12月30日、対外貿易経済合作部、国家税務総局、国家工商行政管理局および国家外為管理局は共同で「外資系企業の検査、認可、登記、外国為替および税務の管理強化に関する問題についての通達」(Circular on Issues Relevant to Strengthening the Administration of the Examination, Approval, Registration, Foreign Exchange and Taxation of Foreign-Invested Enterprises) を公布し、同通達は2003年1月1日に発効した。この通達には中国における外国からの投資に関する重要な法律のトピックの包括的リストが掲載されている。下記記事では、その通達が明確化した3つの重要な問題の概要が述べられている。すなわち、ジョイントベンチャーに対する外資による出資比率の25%基準、純中国国内企業に対する外国投資家による投資および中国の自然人による中国・外資ジョイントベンチャーに対する投資の可能性である。
詳細についてはNew MOFTEC Circular Clarifies Key Foreign Investment Issuesを参照のこと。
国家外為管理局が直接投資および対外貿易取引に関する外国為替に関し重要な2通達を発出
国家外為管理局は本年3月上旬、下記題名の重要な2通達を発出した。
- 「外国投資家による直接投資に関する外国為替管理についての通達」(Circular Regarding Administration of Foreign Exchange in Connection with Direct Investment by Foreign Investors)、 および
- 「国内事業体が関わる対外貿易取引における価格決定通貨として人民元を使用することについての通達」 (Circular Regarding Using Renminbi as a Pricing Currency in Foreign Trading Transactions Involving Domestic Entities).
これらの通達は、外国投資家に待ち望まれていた、現行の直接投資および輸出入に関する外国為替管理政策を変更し、明確化している点で、外国投資家にとって大きな意味を持つと考えられる。
詳細については、SAFE Issues Two Important Circulars Regarding Foreign Exchange for Direct Investment and Cross-Border Tradingを参照のこと。
アジア地域の中国プラクティス関連に関するお問い合わせ先:
東京オフィス
中村さおり
ウェイン・ピタウェイ
ジェイ・ポナゼッキ
上海オフィス
チャールズ・コーミー
香港オフィス
ジョナサン・レンバーグ
馬小虎
ロバート・ウォール
北京オフィス
スティーブン・トロント
このニュースレターがご提供する情報は一般的なもので、いかなる個別の事案に対しても適用されることを保証したり、解決を提供するものではありません。具体的な事案においては、当該事案に対する個別の法的助言なくして、ご判断をなされないようにお願い申し上げます。