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2014. 05.01

【ニュースレター】 会社法改正の要点 第3回 社外取締役

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(執筆者) 吉村 龍吾高 賢一草間 絵理子

 昨年11月29日に会社法の改正法案が国会に提出され、現在本年の通常国会において審議されています。施行日については、現時点では確定しておりませんが、本年の通常国会において改正法案が成立した場合には、来年4月1日が最有力と見られています。第3回目となる本稿では、社外取締役に関する規律についての改正を取り上げます。

1. 現行の会社法ルール及び証券取引所ルール

(1) 現行の会社法ルール

 現行会社法では、特別取締役を選定する場合[1]及び委員会設置会社である場合[2]を除き、社外取締役を設置する義務はなく、社外取締役を設置するか否かについては、各会社の判断に委ねられています。

 なお、現行会社法では、社外取締役の範囲は、(i) 現に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役、執行役又は支配人その他の使用人(「業務執行取締役等」)ではなく(現在要件)、かつ、(ii) 過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等になったことがない者(過去要件)とされています(現行会社法第2条第15号)。

 また、役員のうち、責任限定契約を締結できるのは、社外取締役及び社外監査役に限定されており(現行会社法第427条第1項)、責任限定契約に関する定款の定めがある場合には、社外取締役及び社外監査役である旨が登記事項とされています(現行会社法第911条第3項第25号及び26号)。

(2) 証券取引所ルール

 一方、上場会社については、一般株主の利益保護を目的として、有価証券上場規程の企業行動規範のうち遵守すべき事項として、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれがない社外取締役又は社外監査役[3])の1名以上の確保が義務付けられています[4]。また、独立役員に関して記載した「独立役員届出書」を取引所に提出することや、コーポレートガバナンス報告書において独立役員の確保の状況を開示すること等が義務付けられています。

2. 改正法ルール

(1) 社外取締役設置義務化の見送り

 法制審議会においては、主に海外の機関投資家による、日本の上場企業のガバナンスに対する批判を受け、コーポレート・ガバナンスの強化を目的とした議論が行われました。その一環として、社外取締役の設置を義務付ける案も提案されていました。しかしながら、社外取締役の設置がコーポレート・ガバナンスの強化に役立つかについて実証されているわけではないこと、一律に社外取締役を設置することを義務付けると、柔軟なガバナンス体制の設計を阻害すること等の理由から、経団連をはじめとする経済団体からの根強い反対意見もあり、今回の改正法案では義務付けは見送られることになりました。

 しかし、改正法案の附則では、施行後2年を経過した後、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案した上で、必要があると認める場合には、社外取締役設置の義務付け等所要の措置を講ずることが明記されています(附則第25条)。そのため、施行後2年を経過した後に義務化される可能性がある点には留意する必要があります。

 また、改正法案の成立・施行に先立ち、「会社法制の見直しに関する要綱」の附帯決議に従い、証券取引所ルールが改正され、本年2月10日から施行されています。改正後の証券取引所ルールにおいては、「取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」という努力義務が上場会社に既に課せられています。

(2) 社外取締役不設置の場合の開示規制

? 概要

 上記のとおり改正法案では社外取締役設置の義務付けが見送られたものの、その代わり、証券取引所ルールにおいて上場会社に対し取締役である独立役員を確保する努力義務を課し、かつ、以下で述べるとおり、改正法案において社外取締役を設置していない一定の株式会社に「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明義務を課すことにより、「Comply or Explain(応諾か釈明か)」というイギリスの証券取引所におけるルールと同じような規律が働くことになります。

 具体的には、改正法案では、(i) 事業年度の末日において、(ii) 監査役設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)のうち、(iii) 株式について有価証券報告書提出義務を課されている会社であって、社外取締役を置いていない場合には、当該事業年度に関する定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明を義務付けています(第327条の2)。かかる理由の説明は、取締役選任議案の有無や株主からの質問の有無にかかわらず[5]、行う必要がありますので、株主総会のシナリオを作成する際には注意が必要です。

 さらに、会社法施行規則において、上記の場合、事業報告及び(社外取締役候補者が含まれていない取締役選任議案を提出する場合)株主総会参考書類への「社外取締役を置くことが相当でない理由」の記載が義務付けられる予定です。

 継続開示会社であれば、上場会社でなくても当該開示規制の適用があることには留意を要します。

? 「社外取締役を置くことが相当でない理由」

 事業報告及び株主総会参考書類に記載すべき「相当でない理由」は、個々の会社の各事業年度又は当該時点における事情に応じて記載しなければならず、また、社外監査役が2名以上いることのみをもって、「相当でない理由」とすることができない、という規定が会社法施行規則に設けられる予定です。定時株主総会における説明の内容については、改正法案に特段の定めはありませんが、事業報告及び株主総会参考書類への記載と同様の規律があてはまるものと考えられます。

 社外取締役を「置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない理由」の説明・記載が求められ、かつ、上述したとおり、社外監査役が2名以上いることのみをもって「相当でない理由」とすることができないとされるため、株主の理解が得られるような説明・記載を行うことはかなりハードルが高いと思われます。但し、「相当でない理由」の客観的合理性は求められず、会社の真摯な説明があるのであれば、後は株主ないし投資家の判断となり、法的な瑕疵となることはありません。

? 適用時期

 定時株主総会における説明義務については、改正法案の附則において特段の定めがないことから、改正法案の施行後、直ちに適用されることになります。そのため、改正法案が来年4月に施行された場合には、3月決算の会社で(i)ないし(iii)の要件を充たす会社であれば、同年6月開催の定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明することが必要となることになります。

 一方、事業報告及び株主総会参考書類への記載義務の適用時期については、今後公表される会社法施行規則の附則を確認する必要があります。

(3) 社外取締役の範囲の変更

 改正法案では、社外取締役[6]の現在要件が厳格化されるとともに、過去要件の一部が緩和されています。このような改正により、現行法では社外取締役としての要件を充たしていた社外取締役も、改正後には要件を充たさなくなる場合があります。この改正は、上場会社や継続開示会社にとどまらず、譲渡制限会社を含むあらゆる株式会社に適用があります。

? 現在要件の厳格化

 現行の現在要件に、以下の要件が追加されます(第2条第15項ハ?ホ)。

  (i). 当該会社の親会社等[7]又は親会社等の取締役、執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと

  (ii). 当該会社の兄弟会社[8]の業務執行取締役等でないこと、並びに

  (iii). 当該会社の取締役、執行役若しくは支配人その他の重要な使用人[9]又は親会社等の配偶者又は2親等内の親族でな
         いこと

 親会社等に関する(i)の要件については、業務執行の有無を問題にしておらず、親会社の社外取締役であっても要件を充たさないことになり、親会社と子会社の社外取締役を兼任することができなくなります。一方、兄弟会社に関する(ii)の要件では、業務執行に携わっていない限り、兼任が制限されません。近親者に関する(iii)の要件については、親会社や子会社の取締役等の近親者については含まれていないこと、及び「重要な」使用人に限定されていることに注意が必要です。なお、証券取引所ルールにおける独立役員とは異なり、当該会社と取引関係にあるか否かは問われません。

? 過去要件の緩和

 改正法案では、社外取締役にあっては、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等を辞めて10年が経過すれば、社外取締役となれることとなりました(第2条第15項イ)[10]。これは、経営陣の指揮命令系統に属したことがあっても、これが解消された後に一定期間が経過すれば、経営陣との関係が希薄化し、監督機能を認めることができるという考えに基づいており、社外取締役の人材確保に対する会社の負担を軽減させる狙いもあります。

 なお、前記?で述べた(i)?(iii)の新設された要件については、過去要件がなく、現職のみが問題となります。

? 経過措置

 社外取締役の範囲の変更には経過措置があり、改正法案施行時に社外取締役がいる場合には、施行後最初に終了する事業年後に関する定時株主総会の終結のときから適用されることになります(附則第4条)。そのため、仮に改正法案の施行が平成27年4月に行われた場合には、3月決算の会社であれば、遅くとも平成28年6月の定時株主総会において、上記要件を充たす社外取締役を選任する必要があります。したがって、既に社外取締役を設置している会社については、既存の社外取締役が上記要件を充足しているか否かについて確認の上、充足していない場合には、新たな社外取締役の選任に向けた準備を行う必要があります[11]

(4) 責任限定契約の締結範囲の拡大

 改正法案では、責任限定契約を締結できる範囲が、業務執行取締役等でない取締役及び全ての監査役に拡大されます(第427条)。これに伴い、責任限定契約の締結についての定款の定めがある場合に要求されていた社外取締役又は社外監査役である旨の登記が廃止されます(現行会社法第911条第3項第25号及び第26号の削除)。

 現在社外取締役又は社外監査役との間で責任限定契約を締結している会社は、今後、社外取締役以外の業務執行取締役等でない取締役や社外監査役以外の監査役(常勤監査役を含む)との間で新たに責任限定契約を締結するか否かを検討の上、これらの者との間で責任限定契約を締結しようとする場合には、定款変更の手続きを行う必要があります。

3. コメント

 証券取引所ルールにおいて独立取締役を確保することが努力義務とされたこと、及び改正法案において「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明が義務付けられたこと等からすると、上場会社である監査役設置会社では、社外取締役を置くことが原則とされたものと考えられます。東証に上場されている会社のうち、社外取締役を設置している会社が過半数を占めること[12]や、議決権行使助言会社であるISS(Institutional Shareholder Services Inc.)が、社外取締役が1名もいない会社については、経営トップである取締役の選任に反対するという議決権行使助言基準を設けていることからしても、今後は社外取締役を置かないこととした上場会社は、その理由が常に厳しく問われていくことになることが予想されます。そのため、今後は、様々な事情を考慮した上で、社外取締役を置くか否かを判断していくべきものといえます。なお、次回に取り上げる監査等委員会設置会社への移行も選択肢となるでしょう。

 上場企業ではない継続開示会社においては、現在社外取締役を設置していない会社が多くあると思われますが、今後対応を検討する必要があります。

 一方、現在社外取締役・社外監査役を設置している全ての会社においては、社外取締役・社外監査役の範囲の変更に留意を要します。

 また、責任限定契約についても、その締結範囲の拡大に伴い、定款変更を含めた対応を検討しなければなりません。

脚注 

[1] 特別取締役による取締役会の決議の制度を導入するためには、1人以上の社外取締役を選任する必要があります(現行会社法第373条第1項第2号)。

[2] 委員会設置会社における指名委員会、監査委員会及び報酬委員会の各委員会においては、委員の過半数が社外取締役でなくてはなりません(現行会社法第400条)。

[3] 親会社又は兄弟会社の業務執行者、主要取引先等又はその業務執行者、当該上場会社から多額の報酬を得ている専門家等である社外取締役・社外監査役は、原則として、独立役員に該当しないものとされています。

[4] 1名以上の独立役員の確保及びその適切な届出が行われない場合は、企業行動規範に違反したものとして、取引所により、公表措置、上場契約違約金の徴求、改善報告書・改善状況報告書の徴求、特設注意市場銘柄への指定など所定の措置が行われることがあります。

[5] 現行会社法における取締役の説明義務は、株主からの求めがあった場合に生じます(現行会社法第314条)。

[6] 改正法案では、社外監査役についても、社外取締役と同様に現在要件が厳格化されるとともに、過去要件の一部が緩和されています。特に、親会社関係者の取扱い、すなわち、親会社の取締役、監査役、従業員等が子会社の社外監査役になることができなくなる点(これにより、親会社と子会社の社外監査役を兼任することもできなくなる点)について留意が必要です。

[7] 親会社等とは、親会社又は株式会社の経営を支配している者(法人を除く。)として法務省令で定めるもののことを指します(第2条第4号の2)。

[8] 正確には、当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)と規定されています。子会社等とは、子会社又は会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもののことを指します(第2条第3号の2)。

[9] 「その他の重要な使用人」とは、同一の用語を用いている現行会社法第362条第4項第3号と同様の意味と解すべきものと言われています。

[10] 就任前10年間の期間に当該株式会社または子会社の業務執行取締役等でない取締役、会計参与、又は監査役になっていた場合には、それらの役職への就任前10年間について、当該株式会社又は子会社の業務執行取締役等であったことがないことが求められます(同項ロ)。

[11] 監査役会設置会社においては、監査役の半数以上が社外監査役でなければなりませんので、既存の社外監査役が改正法案施行後に社外監査役の要件を充たさなくなる場合には、新たな社外監査役の選任に向けた準備も必要になります。次回のニュースレターで取り上げる監査等委員会設置会社への移行も検討に値します。

[12] 東証が行った集計によると、平成25年8月時点において、東証一部上場会社の62.3%(平成24年より7.0ポイント増加)、全上場市場の54.2%が社外取締役を導入しています。 


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